2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520156
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安村 典子 金沢大学, 自然科学研究科, 教授 (20293376)
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Keywords | アリストパネース / プルートス / ギリシア喜劇 |
Research Abstract |
ギリシア喜劇は紀元前6-5世紀のアテーナイにおいて独特の発展を遂げた。当時作成された多くの喜劇作品のうち、現在ではアリストパネースの11作品が残るのみである。本研究では、このうちアリストパネース最晩年の作である『プルートス』に焦点をさだめて、考察を行っている。 まず本年は、『プルートス』全1209行の古典ギリシア語の日本語訳を行った。本作品の日本語訳は昭和36年に出版された『ギリシア喜劇』(人文書院、後にちくま文庫に収録)があるのみで、その後一度も改訳が行われていない。このため古い用語を避けた、よりわかりやすい翻訳書の出版が望まれている。訳注も新たに付け加えた上で、来年度の出版を目標に、準備を進めている。 『プルートス』は、主題、構成において、他のアリストパネースの作品と著しく異なっている。この差異がいかなる理由によるものかを考察している。当時の社会状況とも密接な関りがあると思われるので、ペロポネーソス戦争に対するアリストパネースの主張などを中心に研究を行っている。 『プルートス』は「富をもたらす神プルートス」をめぐる劇である。経済的豊かさと、それにむらがる人間の欲望に対して、アリストパネースは痛烈な批判を行っている。「富」とは一体何であり、それは人間にとっていかなる意味をもっているのか。この問題はきわめて今日的なテーマであり、2500年の時を越えて、我々に鋭く問いかける問題提起がなされていると思われる。このような問題について、引き続き考察を続けてゆきたい。
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