2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520159
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
越智 和弘 Nagoya University, 国際言語文化研究科, 教授 (60121381)
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Keywords | 快楽敵視 / 女性恐怖 / 禁欲主義 / 資本主義 / 母国語 / 国民国家 / プロテスタンティズム / 投影的思考 |
Research Abstract |
女性的他者性を徹底して消去するメカニズムを編み出したことこそが西欧近代の唯一的特性であると同時に、西欧をグローバルな支配文化の地位へと押し上げる鍵をなしたとする本研究が掲げる主張をまとめるにあたり、これまでとってきた手法、すなわちその現代的問題性とその歴史的起源への考察を着実に推し進めることで大きく考えを深めることができた。本年度の成果は、次の二点に結実した。 1)西欧の文化的伝統が古代ギリシアやローマから現代まで一貫したものとしてたどれるという通説を批判し、そこには五世紀から七世紀にかけて完璧なまでの破壊と断絶が一度あり、そうした大混乱のなかから立ち上がった新たな価値観こそが、快楽敵視を旨とする今日ある西欧文明を説明するうえで欠かせないという立場から、古代ローマの様々な快楽に結びつく文化が、中世ヨーロッパの成立とともに完璧なまでに忘れ去られ姿を消した様子をめぐる考察をさらに推し進めた。そしてその成果を、2007年7月6日に名古屋市立大学にて開催された日本独文学会東海支部夏季研究発表において発表した。 2)西欧文明を貫く女性的快楽敵視が現代人の精神的病に大きく影響している証左を得るため、「フロイトの精神分析の方法」、「精神療法について」、「神経症病因論における性の役割について」など、これまでとかく詳細な検討が加えられてこなかったフロイトの論文を中心に翻訳をおこなうことで、女性的快楽に対する罪責感が、現代に至るまでヨーロッパ人の心にどれほど深い影響を与え続けてきたかについての確証を得ることができた。この成果は、『フロイト全集』第6巻(岩波書店)に収録され、2008年の夏以降に刊行予定である。
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Research Products
(2 results)