2007 Fiscal Year Annual Research Report
ヴィクトリア朝文学における都市生活者の狂気:その社会的および心理的文脈の解明
Project/Area Number |
17520162
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松岡 光治 Nagoya University, 国際言語文化研究科, 教授 (70181708)
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Keywords | ヴィクトリア朝 / 狂気 / 都市生活者 / ディケンズ / ギャスケル / ギッシング / 自殺 / 幽霊 |
Research Abstract |
研究代表者は社会学と心理学を中心に据えた隣接領域の方法論と研究成果を統合した学際的視座に立ち、イギリス近代の文明社会が人間に強いた疎外感の結果として生じる狂気について、文学テクスト(特にディケンズ、ギャスケル、ギッシングの小説)を通し、主として権力の背後に潜んだ狂気の社会的および心理的文脈の分析を行なった。平成19年度は、『ディケンズ鑑賞大事典』(南雲堂)の共編者として付録CD-ROM制作の責任者になると同時に、『大いなる遺産』の章では階級意識に目覚めた少年の愛に潜む狂気を自己欺瞞の側面から考察した。また、科研費の出版助成を受けて11月に上梓した編著『ギッシングを通して見る後期ヴィクトリア朝の社会と文化』の「都市」の章では、階級に関するギッシングの決定論的な見解を通して、疎外されて狂気に至る都市生活者の心理構造と様々な社会的要因との相関関係を明らかにした。そして、ディケンズ・フェロウシップ日本支部の学会誌『年報』(第30号)に掲載された「ディケンズの作品におけるイジメの問題」では、登場人物に観察できる狂気の諸相に焦点を定め、人間が一定の社会的状況のもとで示すイジメという行動の法則性を突き止めた。最終年度の科研報告書には、"Notions of Madness in the Works of Dickens"と"Madness and Ghosts: The Presentation of Childhood in The Turn of the Screw and Great Expectations"という2本の英語論文を新たに加えた。
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Research Products
(5 results)