2005 Fiscal Year Annual Research Report
帝国形成期におけるイングリッシュネスと国家表象の諸相
Project/Area Number |
17520172
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
飯田 操 広島大学, 総合科学部, 教授 (80116772)
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Keywords | イギリス帝国 / 国家表象 / イングリッシュネス / ブリティッシュネス / ユニオン・フラッグ / 「ルール・ブリタニア」 / コインの意匠 / 風刺画 |
Research Abstract |
自国意識を醸成する国家表象の役割の重要性に言及しながらイギリス帝国の形成過程を辿る本研究において、本年度は主にエリザベス朝における自国意識と比較検討しながらステュアート朝のブリテン体制の特質について考察し、その後の帝国意識の発展を辿った。すなわち、ユニオン・フラッグや「ルール・ブリタニア」成立の背景には、イギリス帝国のあり方についての根本的な二つの方向である「閉鎖海洋論」と「自由海洋論」が反映していること、さらに、これがいわゆる「イングリッシュネス」と「ブリティッシュネス」の二つの概念にも関係していることを考察し、イングランド中心のブリテン意識が帝国意識に転換されてゆく過程を当時の風刺画や政治的なジャーナルに登場する国家表象やそれについての記事によって実証的に検討した。具体的には、国家表象のひとつであるブリタニアについて、その意匠をもつコインの起源を辿るとともに、チャールズ二世の治世にその意匠がイギリスの硬貨に登場する経緯を考察し、その後の意匠の変化を風刺画に盛んに登場するブリタニアの図像の変化などと関連させて検討した。同時に、これらの国家表象が単に排他的な愛国心を煽るために使われるだけでなく、ジャーナルの発達や新しい富裕階層の誕生などの社会的、文化的な要因によって変化することにも留意した。 資料の収集にあたっては、主としてオックスフォード大学ボドレアン図書館所蔵の一次資料を利用したほか、とくに18世紀の風刺画や19世紀のさまざまなジャーナルの記事や国家表象にかかわる図版については大英博物館のプリント部門および国会図書館所蔵の資料によって確認をすすめた。
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Research Products
(1 results)