2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヴィクトリア朝における女性の召使いの研究:その衣服、生活、文学表象をめぐって
Project/Area Number |
17520179
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
西村 美保 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (60284452)
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Keywords | ヴィクトリア朝文化 / ヴィクトリア朝文学 / ファッション / ジェンダー / イギリス / 民族史 |
Research Abstract |
平成17年度の本研究の研究実績は以下のとおりである。 まずは、パメラ・ホーン著、The Rise and Fall of the Victorian Servantsを中心に、ヴィクトリア朝の召使の実態に関する本を参考に、女性の召使の地位や、給料、服装、生活状況の把握等に努めた。イギリスの社会は階級社会であるが、召使の世界も階層があり、その上下関係は厳しかった。少なくともヴィクトリア朝において召使を雇うということは中産階級であることを示すステイタスであった。雇い主は、裕福な紳士から下宿屋に至るまで多様であり、使用人の数も大きなお屋敷では200人ほどもいたが、下宿屋では雑役女中一人しか雇われなかった。階層の上にいる女中頭は雇い主に一目置かれ、他の使用人に対し権力を持っていた。女主人の身支度をするレディース・メイドも様々な特権を持っていた。ガヴァネスは一種独特な立場にいて、他の使用人と馴染めないところがあった。 召使に関する本に必ず引用されているのが現実に当時雑役女中として働いていたハンナ・カルウィックの日記であり、彼女が結婚した紳士、アーサー・マンビーとの関係性を描いたLove & Dirtや、批評書をもとに彼らの日記を読み、二人の関係性について考察した。 平成17年、6月には連合王国に関連資料の収集のため出張し、多くの有益な資料を収集できた。 11月19日には「ヴィクトリア朝文化研究学会」(於:中京大学)において「ヴィクトリア朝の階級とジェンダーをめぐる一考察:Arthur MunbyとHannah Cullwickの場合」と題して研究発表を行なった。二人の関係性は当時の中産階級の紳士と、その女性の使用人との関係を象徴している一方で、結婚に至った関係として、また様々な点で異例のものである。 その後、文学における召使の扱われ方を論じた批評書を読み、召使がいかに小説の中で登場し、そのプロットや会話の中でどのような関わり方をしているのかを吟味している。
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