2006 Fiscal Year Annual Research Report
「長い十八世紀」における女性作家の相互依存性と公共圏の問題に関する総合的研究
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17520185
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Research Institution | Yamagata Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
梶 理和子 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 講師 (60299790)
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Keywords | ジェンダー / 公共圏 / 女性作家 / 女性読者 / 出版文化 / 上演・出版戦略 / 匿名性 / 王立協会 |
Research Abstract |
本年度は、十七世紀から十八世紀にかけて、(形成されつつある)公共圏における女性作家形成の問題を考察するために、Aphra Behnを主軸とする、女性の知的ネットワークを総合的に捉えることを試みた。すなわち、Behnに続く第二世代の女性作家たちのテクストを扱うことで、これらの作家による一枚岩的な「女性作家」という概念を形成するのではなく、女性作家間の対立/協力/影響関係といった異種混交的な力関係、あるいは女性作家たちを取り巻く同時代の男性作家との関係性に焦点を当てることで、職業作家という概念/地位が、どのように当時のジェンダー意識と絡みつつ発展していったのかを検討した。 具体的には 1.当時の女性の知的ネットワークを再構築するために、Delarivier Manleyを初めとする十七世紀末に劇作家として登場し、十八世紀に作家として活躍する女性たちの、Aphra Behnに対する意識、同時代の女性作家(また同様に、同時代の男性作家)に対する意識を演劇/散文から、あるいは、当時の政治文化的状況、出版メディア等の商業的事情を一次資料から掘り起こすことを行った。 2.王立協会の設立といった当時の「知」の形成に関わる問題や、出版文化史等に関する十七・十八世紀の一次資料を、東北大学や英Library of Royal Societyで収集を行い、文学作品との関連性をたどりやすい形に分類・整理を進めた。 3.十七世紀末の人気雑誌や芝居に描かれる、女性の「書く/読む」という行為に関する問題(意識)を、ジェンダーの視点から分析することで女性作家/読者という社会現象を考察した。
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