2007 Fiscal Year Annual Research Report
「長い十八世紀」における女性作家の相互依存性と公共圏の問題に関する総合的研究
Project/Area Number |
17520185
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Research Institution | Yamagata Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
梶 理和子 Yamagata Prefectural University of Health Science, 保健医療学部, 講師 (60299790)
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Keywords | ジェンダー / 公共圏 / 女性作家 / 女性読者 / 出版文化 / 上演・出版戦略 / 匿名性 / 文学ジャンル |
Research Abstract |
研究最終年度にあたる本年度は、これまでの研究成果を踏まえた上で、「長い十八世紀」における女性作家たちの知的ネットワークをめぐる様々な政治的、経済的状況、および女性のジェンダー等が次第に問題化していく(「観客」・「読者」を含む)公共圏という場を考察し、新たな文化研究の展開を試みた。そこで、当時の女性作家の受容の問題や、それに対する男性作家/(女性)読者の反応などを扱い、ジェンダー論の視点から、「公共圏」を再考すると同時に、「小説」の誕生といったジャンル論の再解釈を行い、女性作家研究と男性作家研究の相互依存性(の可能性)に対して検証を行った。 具体的には、これまで分析基盤とした主要な理論1)ジェンダー研究、2)フェミニズム研究〔女性作家同士の異同および男性作家との関係〕、3)上演・出版研究、4)公共圏の成立に関する研究〔公共圏の成立を十八世紀以前に辿る〕を、女性作家形成の問題と関連づけた形で整理し、同様に、Aphra Behnの知的ネットワークを、男性作家/劇場関係者およびアマチュアの女性作家(詩人)等との関係から、またBehnを意識した第二世代の女性作家たちへの影響関係から、明らかにした。以上に加えて、5)観客・読者研究による理論的位置づけを行うことで、新たな女性作家研究の系譜を構築することを試みた。しかしながら、女性作家の系譜やネットワークについては、確かに存在し、作家たち自身により利用されていた一方で、そこから外れる、言うなれば、それぞれの女性作家たちの異端性こそが、また更なる女性作家の支流へと広がりながら、大きな系譜を形成していく過程が窺えた。劇作家として登場した女性たちは、出版文化の隆盛に伴い、哲学的思想や政治的主張を活字化してより広範に流通させる、作家として確立されていったことが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)