2005 Fiscal Year Annual Research Report
西洋古典文学における間テクスト解釈理論に基づく実証的作品論研究
Project/Area Number |
17520186
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大芝 芳弘 首都大学東京, 都市教養学部人文・社会系, 教授 (70185247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 好則 国際基督教大学, 教養学部人文科学科, 助教授 (50295458)
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Keywords | 西洋古典 / 文芸理論 / 間テクスト解釈理論 / 文体論 / 叙述技法 |
Research Abstract |
初年度である本年度は、関連する先行諸研究の概観と、主要作品についての検討を開始した。まず、文芸理論に関する諸研究を調査し、間テクスト解釈理論を始めとする諸文芸理論について概観した。また、作品分析で特に注目する修辞技法および文体論的特徴に関しては、文体論・修辞学および文学史に関する先行諸研究の成果を調査し、主な修辞技法・叙述技法の発展の様相を把握することに努めた。これと平行して、本年度の演習でも前年度から継続して西洋古典文学の代表的作品の中から先行作品との比較研究に適した作品を取り上げ、『イーリアス』と『アエネーイス』、アポッローニオス・ロディオスとオウィディウス『変身物語』、ヘーシオドスとアラートス、ルクレーティウスとウェルギリウス『農耕詩』、サッポー等のギリシア抒情詩とホラーティウスの『カルミナ』など、本研究の対象となる候補作品を各種校訂本・注釈書を綿密に調査しつつ読解し、その語法・韻律・修辞技法・叙述技法など多様な観点からその特徴の検討を行った。これらに加えて、佐野は「Aristophanes, Pax 1268-1304:叙事詩およびエレゲイア詩パロディー場面について」と題する研究発表を行い(2005年10月16日、於慶応大学三田キャンパス)、オデュッセウスの漂流譚の構成についての論考を準備し、またギリシア喜劇でのパロディーの技法やエレゲイア詩における叙事詩のモティフの使用なども間テクスト理論を視野に入れて分析した。また大芝は、セネカの『倫理書簡集』後半部の翻訳作業を通じて、この作品と哲学的説教文学の伝統との関連を考察するとともに、自他の諸著作への明示的・暗示的論及というまさに間テクスト理論的様相を当該書簡集において跡づける作業を行い、本研究にとっても大きな示唆を得た。こうした研究と並行して、必要となる各種文献の選定と購入を進めた。
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