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2006 Fiscal Year Annual Research Report

後期ゲーテにおける「神話に対する反抗」

Research Project

Project/Area Number 17520188
Research InstitutionToyama Prefectural University

Principal Investigator

中川 佳英  富山県立大学, 工学部, 教授 (60227759)

Keywordsゲーテ / ファウスト / ヘレナ / 美 / 親和力 / 昇華 / アドルノ / ベンヤミン
Research Abstract

1.アドルノによれば、醜は恐ろしさを封じ込めたもの、美は、醜を封じ込めたものである。恐ろしさとは生を脅かす存在であるが、その内容は歴史的に変遷していく。中川は、アドルノのこの主張の例証をゲーテの『ファウスト』における、ヘレナの中世ドイツへの移住という設定の中に見ようとした。この移住は筋の展開上は、ヘレナの夫メネラオスによる復讐を避けるためである。しかし中川は、実はメフィスト扮するフォルキアスによるヘレナ批判が彼女をしてギリシャを去らせた決定的な原因であると考えた。中川による研究史上の新解釈によれば、フォルキアスの批判は、ヘレナが纏っている美のイデオロギー性の暴露であり、弱肉強食の生存競争を覆い隠しているヴェールをはぎ取るものである。ヘレナの美は、文字通りの神話であると同時に、批判理論が用いる意味での神話、すなわち、盲目的に受入られてきたイデオロギーそのものである。ヘレナがギリシャを去るのは、美自身による、そのイデオロギー的役割の自己批判の結果であると言える。以上は、後に刊行される科研費報告書に論文として掲載される予定である。(「ヘレナとフォルキアス-美の啓蒙的弁証法」)
2.ゲーテの『親和力』における神話的なもの、すなわち既成倫理や慣行によって自明なもの、不可避なものとして作品全体を流れる大きな茫洋とした力については、すでにベンヤミンの『親和力』論によって指摘されている。中川は、さらに登場人物達の恋愛感情=情熱が、最終的にこの「神話」に屈する過程を、「延期」「昇華」のフロイト的構図に当てはめて考察することを試みた。この構図によって、オッティーリエの聖女化から、「神話」に対する作者の両義的な姿勢(一方でオッティーリエを天上に祭り上げながら、他方で地上における抑圧を冷徹に描くという姿勢)が浮き彫りにされる。この論も、同上の科研費報告書に掲載される予定である。(「『親和力』における<情熱>、<延期>、<昇華>」)

  • Research Products

    (1 results)

All 2007

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] Das Sehen in Rilkes "Aufzeichnungen des Malte Laurids Brigge" Zweites Kapitel : die existentiell negativen Aufzeichnungen2007

    • Author(s)
      中川 佳英
    • Journal Title

      富山県立大学紀要 第17巻

      Pages: 30-36

URL: 

Published: 2008-05-08   Modified: 2016-04-21  

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