2006 Fiscal Year Annual Research Report
英国小説におけるカントリー・ハウスの表象と意義-ジャンルの結節点としての「邸宅」
Project/Area Number |
17520192
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
新野 緑 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (00189234)
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Keywords | 英米文学 |
Research Abstract |
研究の2年目である18年度は、当初の計画どおり、19世紀を中心に、カントリー・ハウスを舞台の中心に据える小説とその研究書の文献リストを作成し、購入、解読、整理を行いながら、カントリー・ハウスをめぐる文学作品の形態と意義を、特にゴシック小説からいわゆるヴィクトリア朝のリアリズム小説への流れの中で考察した。また同時に、ファンタジーからリアリズムへの過渡期に流行したロマン派の詩作品に描かれる廃嘘や庭園といった事物の描写にも注目、それらの詩とカントリー・ハウスを扱う小説作品との類似や相違についても考え、資料を購入した。これらの資料の整理と文献リストの作成に学生アルバイトを利用し、また、19世紀イギリスにおける多様な作家のカントリー・ハウスに対する関心の有り様に関して、広く専門的な知識を得るために、専門とするディケンズに関する学会に加えて、日本英文学会、日本ヴィクトリア朝文化研究学会、さらに設立されたばかりの日本オースティン協会やジョージ・エリオット学会などに参加し、多くの研究者との交流を図った。さらに、7月には学外から研究者を招いて本務校において講演会を催し、他の教員や大学院生の参加も仰ぎながら、イギリスにおけるカントリー・ハウスのあり方とそれらを描いた文学作品の特質を際立たせるために、19世紀初頭におけるフランスのカントリー・ハウスのあり方とそれにまつわる文学作品の特質について学び、自らの知識を一層広めることを目指した。さらに、4月から一年間に亘って本務校で行った授業「家族の肖像」では、こうした研究の成果を交えながら、17世紀から19世紀に至る時代にイギリスで流行したファミリー・ポートレートを取り上げ、絵画と文学作品という異なるジャンルの交流にも注目しながら、当時のカントリー・ハウスの視覚的表象についても考えた。それらの研究を踏まえて、ディケンズの情景描写に関する論文を3編(内2編は来年度刊行予定)と、その副産物としてオースティン、ギッシングといった新たな作家に関する論文をそれぞれ1編ずつ(これらも来年度刊行予定)執筆し、来年度のさらなる発展への基盤とした。
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Research Products
(2 results)