2005 Fiscal Year Annual Research Report
戦後再定住期アメリカ・カナダにおける日系作家の創作活動
Project/Area Number |
17520195
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
平石 妙子 共立女子大学, 国際文化学部, 教授 (80060705)
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Keywords | 日系アメリカ人 / 第二次大戦 / 強制収容 / エスニシティ / 日系社会 / 人権意識 |
Research Abstract |
第二次大戦後、各地の強制収容所を出た日系アメリカ人がアメリカ社会に復帰していった戦後の再定住期(1945年〜1959年)における日系作家の創作活動を検討し、戦後の日系アメリカ人のエスニシティや日系社会の変容を考察することが今年度の本研究の主要な目標である。戦後の日系作家は、Rafu ShimpoやPacific Citizenに作品を発表し、創作活動を再開させた。この二つの新聞及び機関誌は、既にマイクロフィルム化されているため、それらを購入し、戦前から活躍していたトシオ・モリ、戦後、本格的な創作活動を始めたヒサエ・ヤマモト及びその他の二世作家による小説やエッセイ等をテーマ別に分類・整理を行いながら、戦争中の強制収容については沈黙を守りつつ、アメリカ社会との新たな関係を探る日系作家の模索の跡を明らかにした。また、これらのマイクロフィルムの検討を通じて、従来の日系文学研究において紹介されてこなかった作家や詩人の作品を検討することもできた。特に日系アメリカ人の歴史研究においても戦後の再定住期における日系アメリカ人に関する研究は現在でもなお空白のままとなっているため、これらの資料を体系的に纏めることは、今後の日系アメリカ人研究において新たな視座を付与するものとなろう。 以上のような予備的作業に加えて、夏にはアメリカのカリフォルニア大学のアジア系アメリカ文化研究センターに出張を行い、センターの図書館で日本では入手できない日系文芸誌や絶版となった日系人の戦後再定住期に関する歴史的資料などを収集することができた。今年度の研究を通して明らかにされたのは、戦後の日系作家の多様性である。特に注目されるのは、日系社会からの逸脱を意識的に試みたヒサエ・ヤマモトの戦後の創作活動である。戦後の黒人系新聞の記者としての経験がヤマモトに与えた影響を検討することで、再定住期の日系作家の意識の変容を辿ることができた。この成果を現在、進行中のヤマモトの評伝の一部に収める予定である。
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Research Products
(1 results)