2006 Fiscal Year Annual Research Report
戦後再定住期アメリカ・カナダにおける日系作家の創作活動
Project/Area Number |
17520195
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
平石 妙子 共立女子大学, 国際文化学部, 教授 (80060705)
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Keywords | 日系二世 / 第二次大戦 / 強制収容 / 戦後最定住期 / エスニシティ / 人種 |
Research Abstract |
本研究の二年目にあたる平成18年度の研究目標は、昨年度の研究成果を踏まえて、戦後のカナダにおける日系作家の創作活動を検討し、戦後の日系カナダ人がカナダ社会に復帰する過程で示された日系カナダ人のエスニシティおよび日系カナダ社会の変容を明らかにすることにあった。まず、そのための予備的作業として、本年度は戦争中も発行されていた代表的な日系新聞、The New Canadian(1940年代後半-1960年)のマイクロフィルムを購入し、戦後の日系作家の活動を収集と整理を行った。戦後の日系カナダ文学といえば、ジョイ・コガワやケリー・サカモトおよびヒロミ・ゴトーなどリドレス運動後の作家に焦点が置かれてきた。それ以前の、特に戦後の再定住期における日系カナダ文学についての研究はまだ本格的には行われておらず、日系カナダ文学研究においては空白のままである。本研究で戦後再定住期のThe New Canadianを検討することで、コガワ以前に日系社会で評価され、活躍した作家の活動の整理及び体系化を通じてその空白を埋める予備的作業を進めることが出来た。戦後の日系カナダ人作家スエ・サダやジャック・ナカモトらをはじめとする作家の短編や詩においては、人種差別に対する日系カナダ人の葛藤が示唆され、主流社会への同化を進めながらも強制収容のトラウマを払拭できずに、揺れ動く日系カナダ人の状況を理解する上で、再定住期における日系作家のテキストは重要な示唆を与えているものであることが了解された。以上のような研究をさらに進めるために夏にはカリフォルニア大学のアジア系アメリカ研究センターで研究を行った。日系コレクションなどで、日系アメリカ人と日系カナダ人の戦後期における再定住過程の差異や、日系アメリカ人によるリドレス運動が日系カナダ人に与えた影響などが明らかにされた。これらの成果を踏まえて、来年度は、戦後の日系アメリカ文学と日系カナダ文学の比較検討を行い、多人種社会であるアメリカとカナダにおける戦後の日系人が置かれた社会状況の差異を明らかにすることが来年度の目標となる。
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Research Products
(1 results)