2005 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀ニューイングランド文学へのヨーロッパ文化の波及と効果
Project/Area Number |
17520212
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
入子 文子 関西大学, 文学部, 教授 (80151695)
|
Keywords | アメリカ文学 / ルネサンス精神史 / ナサニエル・ホーソーン / 痣 / 古典的メランコリー / 視覚芸術 / 理想都市 / <ペンタゴン>の五角形 |
Research Abstract |
ホーソーン生誕二百年を記念して上梓した『ホーリーン・《緋文字》・タペストリー』(南雲堂2004)は、ホーソーンの<ロマンス>をヨーロッパのルネサンス精神史の中で読み、EUや生命倫理など今日的な問題を提起する試みであった。当該研究では、この研究成果を更に発展させた。ニューイングランドに波及したルネサンス期のヨーロッパ文化の効果を、ルネサンス精神史の中で考察し、アメリカとヨーロッパを一つに繋ぐ新たな視点を19世紀ニューイングランドのホーソーン文学研究に定着させることと、アメリカ文学におけるアメリカ文化研究の方法を模索し、研究・教育に寄与することを目的とする。 今年度は(1)共編著『視覚のアメリカン・ルネサンス』(世界思想社2006)を上梓した。過去のシンポジウムの成果を主体に新たに企画し、広義のアメリカン・ルネサンスの文学をルネサンスから20世紀までの絵画・建築・演劇・紋章など幅広い視覚芸術から論じた学際的研究となった。筆者はホーソーンの短篇「痣」の「小さな赤い手」をルネサンスの古典的メランコリーと紋章図像から読み解き、現代の医療倫理への警鐘とした。(2)また関西大学での共同研究の成果をまとめた単著『アメリカの理想都市』(関大出版部2006)を上梓する予定である。ホーソーン研究の余滴と言える。アメリカの<理想都市>をヨーロッパの<理想都市>を背景に、類似性と独自性を考察した。ワシントンDCの都市計画から始めて9.11事件に関わった国防総省<ペンタゴン>の五角形の<形>の意味をルネサンス精神史の中に置き、都市の<形>に込められた設計者の理念に触れた。現在のアメリカの失敗にもかかわらず、二つのグループの始祖達-植民地時代と独立期-に共通して見られる<理想都市>への志向がアメリカの深いところに存在していることに一般の注意を向けたかった。なお『ホーソーン・《排文字》・タペストリー』により、お茶の水女子大より2005年12月に博士(人文科学)の学位を授与された。
|
Research Products
(2 results)