2007 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀ニューイングランド文学へのヨーロッパ文化の波及と効果
Project/Area Number |
17520212
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
入子 文子 Kansai University, 文学部, 教授 (80151695)
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Keywords | ヨーロッパ・ルネサンス / トランス・アトランティック / アメリカ独立戦争 / 精神史 |
Research Abstract |
9・11同時多発テロやイラク戦争を巡る世界情勢から、「かつてのハプスブルクの神聖ローマ帝国や現在のEU及びそれを含むヨーロッパが、大西洋を隔てたアメリカ合衆国に与える精神的経済的影響を鑑みるとき、19世紀半ばのアメリカの、ニューイングランドの作家ホーソーンの作家的想像力は、ますます重要性を増してくる。当該研究はホーソーンのロマンスをヨーロッパのルネサンス精神史の中で読み、今日的な問題を提起するという、かねてからの研究をさらに発展させている。最近の成果『ホーソーン・《緋文字》・タペストリー』、『アメリカの理想都市』(以上単著)、『視覚のアメリカ・ルネサンス』、『図像のちからと言葉のちから』(以上共編著)などは全てこの視点に立っている。しかし、ルネサンス精神史は余りにも広く深い。ホーソーンが滞在し、ルネサンスのエッセンスが詰まっているフィレンチェでは、ホーソーン作品に流れ込んでいるヨーロッパ文化に関する資料が無尽蔵。彼のイタリアン・ノートブックスの記述を追ってイタリアに出かけた。こうして今年度は資料収集には実りがあったが、残念ながら、また珍しいことに、研究論文作成や口頭発表には至らなかった。多岐にわたる組織に於ける論文審査に忙殺され、アメリカ学会、日本ナサニエル・ホーソーン協会、『英語青年』からの依頼書評3本を見たに過ぎない。 ただし研究代表者の一貫したトランス.アトランティックな研究の視点は、奇しくも現在のアメリカ史、アメリカ文学研究の最先端をゆく批評態度である間大西洋史的視点と一致した。折しも『アメリカの理想都市』を上梓した頃から、アメリカ独立戦争をヨーロッパ精神史で捉えるホーソーンの作品に注目し始めていた。混迷を深めるアメリカが、アイデンティティを独立の時代に模索するさまから、19世紀のアメリカ古典作家が、いかに独立の時代を語り直しているかに焦点を当てたシンポジウムを提案・実現させた。その後メンバーを充実させ、共編著『独立の時代』の出版を企画した。
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