2005 Fiscal Year Annual Research Report
現代ケベック文学が映すマイノリティ性を核としたトランスカルチュラリズムの伸展
Project/Area Number |
17520213
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
真田 桂子 阪南大学, 流通学部, 教授 (60278752)
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Keywords | トランスカルチュラリズム / ケベック / モントリオール / ナイム・カタン / ユダヤ系 / コスモポリタニズム / マイノリティ性 / 移動文学 |
Research Abstract |
当研究は、モントリオールの独自の状況を背景にケベックの移民作家たちを中心に発祥したトランスカルチュラリズムに注目し、とりわけ歴史的に抑圧されてきたマジョリティであるフランス系(ケベッコワ)に刻印されているマイノリティ性との関連を中心に、この動向の現状と展望を明らかにしていくことをめざしている。 本年度はまず、ケベックに在住し仏語表現で活発な創作活動を行っているユダヤ系作家のナイム・カタンに注目し、モントリオールのユダヤ系移民の歴史とその作品について分析した。その結果、カタンの作品にはケベッコワとユダヤ系の歴史的な関係が反映され、特に小説『記念日』では、マイノリティ性への共振をバネにしたケベッコワとの連帯と「承認」のコンセプトに基づく新しいコスモポリタリズムが模索されていた。この分析結果は『阪南論集』41巻1号に論文「モントリオールのユダヤ系とケベッコワ」として発表した。 さらに、ケベックにおいてトランスカルチュラリズムが生まれることになった要因、その展開と特徴などを明らかにしながら、1980年代以降のケベック文学において一つの潮流をなしトランスカルチュラルな動向を映しとってきた「移動文学」についていくつかの作品にそいながら詳しく論じ、ケベック現代文学、社会に関するこれまでの研究成果とともに『トランスカルチュラリズムと移動文学』(2006年3月、彩流社)として上梓した。 なお、2006年3月には、パリに在住するトランスカルチュラリズムの提唱者の一人であるフユルビオ・カッチャ氏にインタビューを行い、カナダやケベックだけにとどまらず欧州も視野に入れたこの動向の現状と今後の展望について意見交換を行った。
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Research Products
(2 results)