2006 Fiscal Year Annual Research Report
トランスレーション言説分析と神秘思想の機能に関する研究
Project/Area Number |
17520228
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉村 正和 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 教授 (10033408)
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Keywords | 翻訳理論 / メタ言語 / 純粋言語 / トランスレーション / 文化研究 |
Research Abstract |
平成18年度においては、1970年代を中心にして検討した前年度に続いて、1980年代以降のいわゆる後期トランスレーション・スタディーズの研究動向を中心にして検証した。後期トランスレーション・スタディーズは、エヴェン・ゾーハルとギデオン・トゥーリなどユダヤ系の翻訳理論(「ポリシステム」と呼ばれる)を中心に展開される。後期になると翻訳研究は、翻訳されたテクストがその文化・社会において機能する役割への関心を向けるようになる。この役割には文化・社会的な役割だけでなく政治的な役割が含まれており、翻訳現象そのものが翻訳の政治学というように言語文化間の権力関係の場とみなされるようになる。ポリシステム研究と並行して、W・ベンヤミンとG・スタイナーなどやはりユダヤ系の翻訳理論を考察し、ユダヤ教神秘主義カバラーの言語神秘主義がどのようなかたちでトランスレーション理論に関与しているかを検証した。焦点となるのは翻訳可能性の問題であり、翻訳という行為を通して、言語使用者の意図とは独立して機能する純粋言語の実体について考察した。以上の研究成果を踏まえたうえで平成18年度においては、平成18年8月15日より同29日まで夏季休業期間を利用して、ケンブリッジ大学(連合王国)において研究のための一次資料を収集した。平成18年度末には、2年にわたる研究成果を研究成果報告書(50頁)にまとめて提出した。
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