2005 Fiscal Year Annual Research Report
環大西洋圏における表現媒体と修辞法を中心とした文化のインターフェイス研究
Project/Area Number |
17520235
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
梶原 克教 愛知県立大学, 文学部, 助教授 (90315862)
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Keywords | ポストコロニアリズム / 文化論 / カリブ海地域 / トリニダード:ジャマイカ / 国際情報交換 / 修辞法 / 表現媒体 / 行為遂行性 |
Research Abstract |
「表現媒体」と「修辞法」という2種のインターフェイスを中心に環大西洋圏における文化と社会の関係を考察するという4年間の研究目的のなかで、本年度は次の2点に特化した研究成果を得た。 (1)環大西洋植民地の中で特異な位置にあるアイルランドの脱植民地主義化における社会と文化の関係を考察し、脱植民地主義の過程であらたに国家が形成されてゆくにあたりその国家が国民を統合するためには、「提喩」に代表される修辞が用いられ、空間的な象徴化(部分と全体の連続性)と同時に目的論的(連続した)時間感覚が要請されることが多いことを確認し、いっぽうで、脱植民地主義のためのその修辞が植民地主義が用いる修辞と類似することから、提喩的象徴法に抗う時間感覚を提示する表現が見られる点を論文"Decolonization and Deaestheticization"にて指摘した。次に、脱植民地主義を経てポスト植民地主義の過程へ移行したアイルランド詩人の修辞法と、同時期のカリブ海地域の詩人の修辞法とを比較し、前者がやはり起源を中心とした象徴法的修辞を用いるのに対し、後者が文字そのものの視覚・聴覚的要素をも利用した換喩の運動を提示し、起源から単線的に流れる歴史よりもむしろ反復しつつ散逸する歴史を示唆する点で大きな相違があることを、論文「表象の物質性について(1)-植民地主義以降のカリブ海を例に-」において指摘した。この換喩的修辞と歴史観を今後「擬態(mimicry)」の問題と関連付けてゆく。 (2)研究計画どおり、トリニダード・トバゴ共和国における民族間調停の意義を持つ国家行事の調査を行い、そこで示された言語以外の表現媒体(身体的・音響的・身体的表現)のサンプルを収集した。資料収集は06年2月から3月におこなわれたために、その整理および考察は次年度以降の作業となる。
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Research Products
(2 results)