2006 Fiscal Year Annual Research Report
環大西洋圏における表現媒体と修辞法を中心とした文化のインターフェイス研究
Project/Area Number |
17520235
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
梶原 克教 愛知県立大学, 文学部, 助教授 (90315862)
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Keywords | ポストコロニアリズム / 文化論 / カリブ海地域 / トリニダード:ジャマイカ / 国際情報交換 / 修辞法 / 表現媒体 / 行為遂行性 |
Research Abstract |
デレク・ウォルコットは「カリブ海-文化か擬態か?」というエッセイで「擬態=ものまね」という視点を梃子に社会的・歴史的通念に疑義を呈し、それを転倒していった。従来の研究においても、とりわけポストモダニズムを射程に入れた研究では、たしかに現代における「オリジナル」と「コピー」または「模倣imitation」の問での価値転倒がしばしば指摘されてきたが、ウォルコットの言う「擬態=ものまね」は多少ニュアンスを異にする。前者では時間的に先行する「オリジナル」と後発する「模倣(コピー)」とが同等であることを強調することで、時間性を喪失させひいては歴史を廃棄することになったのだが、ウォルコットの「擬態=ものまね」の場合、二つの歴史軸を相互照射させることで、逆に歴史を呼び込み、特定の歴史観を通じて流布されるイデオロギーを相対化することになっている。 ウォルコットの詩とエッセイを精読しながら、上記の論を11月にハイチで開催された国際カリブ学会(ICCL The 8^<th> International Conference on Caribbean Literature)で、"Mimicry as Figural Imagination"として発表し、その際に会場で受けた指摘やその後おこなった議論をもとに論に再考を加えたものを、論文「表象の物質性について(2)-植民地主義以降のカリブ海を例に-」として3月に発表した。 さらに、昨年度収集した資料をもとに、「擬態=ものまね」が言語的修辞にとどまらず身体的修辞法としても環大西洋的広がりを持つ点について現在考察を続けているが、上記論文でも一部言及したように、言語的修辞と身体的修辞をつなぐ「形体的figural」という考え方を梃子にすることで、本研究当初よりの目的のひとつであった都市と植民地との表現媒体間にある相違の問題につながる回路を見いだしつつある。
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Research Products
(1 results)