2007 Fiscal Year Annual Research Report
環大西洋圏における表現媒体と修辞法を中心とした文化のインターフェイス研究
Project/Area Number |
17520235
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
梶原 克教 Aichi Prefectural University, 文学部, 准教授 (90315862)
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Keywords | カリブ海地域 / 文化論 / ポストコロニアリズム / トリニダード:ジャマイカ / 国際情報交換 / 修辞法 / 表現媒体 / 行為遂行性 |
Research Abstract |
本年度はこれまで同一課題で研究してきた修辞に関する問題を、歴史と空間の問題と関係付けて研究し、国際学会での発表図書出版という形で業績発表をおこなった。結論は次の通りである。 (1)修辞の問題:環大西洋圏文化の趨勢としてしばしば「ディアスポラ」とよばれる流動性と異種混淆性が挙げられるが、いっぽうでアフリカという起源への統一的回帰に対する志向も見られる。この矛盾を修辞的に指し示したのがカリブ文学に見られる「撞着語法」であり、修辞的戦略としての「法」である「自由間接話法」であり、隠喩としての子午線」である。 (2)歴史と空間:子午線をはさんだアメリカとヨーロッパという地政学的対立は、いっぽうで「新」世界と「旧」世界という時間性をはらんでいる。それは、世界時を定めるグリニッジ天文台と本初子午線といった直接的な関係性にとどまるものではなく、そもそもアメリカを発見していった時代のヨーロッパにとって、海を渡りはるか遠い土地へいたる旅とは、過去へといたる旅だった。だからこそ彼らは、西インド諸島や南北アメリカ大陸の住民を、文化的段階における自分たちより前の状態にいる人間だとみなしていたのである。しかし逆説的にも、アメリカという自分たちより発達していないいわば「旧」態依然の原住民たちを発見するやいなや、ヨーロッパのほうが「旧」世界と呼ばれ始めるという、ねじれが生じる。 (3)修辞・歴史・空間:上記のように大西洋をはさんだ南北アメリカとヨーロッパの関係に見られる矛盾した「新」「旧」の対立に、環大西洋圏文化には「アフリカ」という第三項が付加され、時間と空間はさらに複層化する。「子午線」という修辞や「撞着語法」はそうした歴史=空間認職と密接な関係がある点を、発表図書「海の詩学」ではカリブ海文化を中心に、「黒人文化と空間の諸相」ではアフリカ系アメリカ人文化を中心に論じた。
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Research Products
(3 results)