2005 Fiscal Year Annual Research Report
戦前の日本語小説に表れた台湾の「日本人移民村」の文学的研究
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17520244
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Research Institution | Kumamoto National College of Technology |
Principal Investigator |
草野 美智子 熊本電波工業高等専門学校, 一般科, 教授 (70311115)
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Keywords | 戦前日本 / 日本人移民村 / 台湾東部 / 濱田隼雄 / 小説『南方移民』 / 坂口レイ子 / 小説『曙光』 |
Research Abstract |
平成17年度は18年度に訪台する現地調査の準備段階と位置付けた。 平成15〜16年に科研費を得て、台湾東部に位置する豊田、吉野(現在の吉安郷)、林田(現在の鳳林鎮大栄と北林村)を訪れ、かつての農業移民村を知る古老から聞き取りを行った。今年度も、彼らと再度連絡をとり、協力依頼を要請した。また、研究課題として取り上げる濱田隼雄『南方移民村』の医師と、舞台となった鹿野村の診療所医師とのモデル関係を明らかにするために、国内での資料収集に努めた。当時の新聞記事から、それぞれの医師が自らの決心で渡ってきていたらしいことがわかった。ただ、花蓮港庁や台東庁の援助はあったはずで、移民村そのものが総督府などが招聘して出来た以上、何らかの采配組織や補助などはあったと見る方が自然であるところまでは推測できるようになった。今後それを裏付ける公的な資料を突き止めることが課題として残る。 一方で、坂口レイ子『曙光』から感受される移民の心情を相補するために、日本の華僑たちから聞き取りを積極的に行った。日本から台湾へ渡ったのと逆であり、農村と商業都市の違い、時代背景も異なるが、異なる文化に入っていく心性の諸相について理解を深めた。心情に関わるデリケートな問題も含むが、特に、結婚して戦後もそのまま台湾に残った当時の日本人女性と連絡を取り合いながら、虚構の世界を具現化しつつ、逆に現実が言葉(小説)の世界にすくい上げられていく過程を検証しようと試みている。
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