2005 Fiscal Year Annual Research Report
ミャオ・ヤオ諸語の歴史文法研究-特異現象の発生と伝播を中心として
Project/Area Number |
17520250
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
田口 善久 千葉大学, 文学部, 助教授 (10291303)
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Keywords | ミャオ・ヤオ諸語 / 地域伝播 / 歴史言語学 / 東アジアの言語 / 歴史文法 |
Research Abstract |
平成17年度は、ミャオ・ヤオ諸語の文法現象の中で多様性を示し、それが系統関係や地域伝播の指標となる可能性のある現象を取り上げ、テストケースとして分析を行った。データとしては、申請者のこれまでの調査、先行研究、海外研究協力者からの情報によって得られたデータを整理し、使用した。詳細は以下の通りである。 1.まず、ミャオ・ヤオ諸語の形態・文法特徴、とりわけ名詞句内部の構造を類別詞の統語、形態、意義的特徴に関して分析を行い、類型化することを試みた。具体的には、類別詞と共起しうる文法単位、単位間の語順、類別詞の屈折変化、類別詞の機能などについて分析した。その結果として、(1)ミャオ・ヤオ諸語の名詞句内部の語順は、指示詞を名詞句の先頭におく構造と、最後におく構造に二分されること、(2)名詞の修飾成分が名詞に後続する現象が、複合語を形成する場合に限定される(つまり語の内部に限定される)言語と、名詞句の内部で自由に起こる言語に分けられること、(3)類別詞の屈折現象は多様性が高いが、指小辞的な機能が多くの言語に見られること、(4)類別詞の意義的な特徴として、有生(+animate)かどうかが主要な分類指標になる言語と、指示物の概念の形態(線的、平面的、塊状など)が主要な分類指標となる言語に分けられることなどがわかった。 2.以上の特徴を分布面で調査したところ、基本的にミャオ語系の言語と、ヤオ語系の言語という系統的分類とおおよその一致をすることがわかった。周辺言語との対照では、中国語、タイ系諸言語(チワン語、プイ語、トン語、スイ語)との対照を試みた。それについては未だ結論は出ていないが、ヤオ語系の言語には中国語からの統語的な現象の組織的な伝播が見られると考えてよいようである。類型転換の典型的な例として分析できると思われる。これについては次年度の研究に一部持ち越す。 3.文法的な特異現象として、類別詞の屈折があり、その意義的な特徴としては、指小辞機能及び指大辞機能がある。この分布については次年度さらに研究していくつもりである。 以上の研究の成果については、11でのべる研究論文に発表した。
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Research Products
(2 results)