2006 Fiscal Year Annual Research Report
ミャオ・ヤオ諸語の歴史文法研究-特異現象の発生と伝播を中心として
Project/Area Number |
17520250
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
田口 善久 千葉大学, 文学部, 助教授 (10291303)
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Keywords | ミャオ・ヤオ諸語 / 地域伝播 / 歴史言語学 / 東アジアの言語 / 歴史文法 |
Research Abstract |
平成18年度は、17年度の研究によって得られたデータとその整理にもとついて、ミャオ・ヤオ諸語の文法現象の中で多様性を示し、それが系統関係や地域伝播の指標となる可能性のある現象についてさらに分析を試みた。詳細は以下の通りである。 昨年度に続いて、ミャオ・ヤオ諸語の形態・文法特徴、とりわけ名詞句内部の構造を類別詞の統語、形態、意義的特徴に関して分析を行い、類型化することを試みた。その結果として以下のようなことが明らかとなった。 1.ミャオ・ヤオ諸語の名詞句内部の語順が修飾要素modifierが名詞に後行する語順が、統語的関係の中にどの程度現れるかによって、この言語集団がばらつきを見せる。ミャオ語系の諸言語は名詞を修飾する名詞、動詞、形容詞が名詞に後行することが多いのに対し、ヤオ語系のミエン語ではこの語順は、化石化して複合語の中の形態素間の関係としてのみ現れることが多い。しかし、これは二極的なものではなく、段階的に分布することがわかった。 2.ミエン語のビャウミン方言(Bjau-Min)に見られる形態素ka^4の用法に着目して、名詞の場所性を明示するストラテジーについて考察した。ミャオ語の3つの方言とミエン語ミエン方言では場所を表す方位詞が名詞とともに用いられて同様の機能を果たすことがわかった。ビャウミン方言のka^4はまた漢語のカルクと見られる用法があることも明らかとなった。このka^4の他のミャオ・ヤオ諸語における同源語は現在のところ不明である。 3.重複現象においては、ミエン語とミャオ語で特徴が違っていることがわかった。ミエン語では、単音節の重複による二音節形式の生成が中心であり、かつ漢語の動詞・形容詞の重複のカルクが見られるのに対して、ミャオ語では、文法的に生産的な重複は少なく、語形成に用いられることが多い。さらに、ミャオ語では形容詞が四音節形式の派生形式をもつことが多く見られる。 以上の研究の成果については、11でのべる研究論文及び国際学会(39th International Conference on Sino-Tibetan Languages and Linguistics, Washington University)において発表した。
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Research Products
(1 results)