2007 Fiscal Year Annual Research Report
〓敬の音韻研究について-『毛詩原解』の音注の分析を中心とした研究
Project/Area Number |
17520267
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
富平 美波 Yamaguchi University, 人文学部, 教授 (00188799)
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Keywords | 中国語学 / 音韻 / 古音学 / 明 / ?敬 / 毛詩原解 |
Research Abstract |
『研究成果報告書 資料編』を作成・印刷した。内容は、『毛詩原解』音注一覧(テキストの校合結果を含む)、韻部別の押韻字と音注の対照表(中古音付)及び注、押韻字以外の文字に対する音注一覧(中古音付)から成る。電子ファイルとして作成した後、字句の校正を行い、表示の中古音について、向熹『詩経詞辞典』の第2版における修訂結果を注の形で反映させた。 ついで、上記『資料編』に基づき、音注の音韻的特徴を、中古音及び同著者の手になる韻書「五声譜」(『読書通』所収)の分韻と対照することにより明らかにし、また、どのような音が押韻可能とみなされているかを調査して、『報告書』本編の執筆に着手した。 その結果、『毛詩原解』の音注に反映された押韻の枠組みは、ほぼ「五声譜」の分韻に一致するが、入声などで、それを逸脱した押韻も許容されていることがわかった。 「五声譜」の音韻体系は、つとに、明代末期の湖北方言(著者の本籍地である)を反映するとの指摘がなされているが、中古音とは明らかに異なる。『毛詩原解』の音注は、全濁声母の清音との混同、細音韻母における-ng、-n、-mの鼻音韻尾の合流、-k、-t、-pの韻尾の区別の無い入声の分韻状況などの点では、「五声譜」と一致するものの、「五声譜」の中でもきわだった特徴を示すと思われる部分、例えば、遇摂一等端組・精組や三等荘組が流摂と合流しているなどの現象は、『毛詩原解』の音注にも反映している反面、それと合致せず、むしろ中古音以来の伝統的な音の類別に従っている部分があることがわかった。
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