2006 Fiscal Year Annual Research Report
テクスト言語学の観点からのロシア語副動詞の総合的研究
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17520284
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
北上 光志 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (40234257)
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Keywords | 副動詞主体 / スラブ語 / ゲルマン語 / アジア圏言語 / 不可分性 / 所有者 / 所有物 / 心的態度 |
Research Abstract |
本年度は副動詞の問題を他言語と比較して分析した。比較に当たって注目したのはロシア語副動詞と本動詞主体の関係である。従来、ロシア語副動詞と本動詞主体に関する研究はほとんどなされていない。比較言語はロシア語と同じスラブ語に属するチェコ語、ポーランド語、ブルガリア語とゲルマン諸語の英語とドイツ語、ロマンス諸語のフランス語とイタリア語、他に中国語、インドネシア語、日本語である。分析資料としてはこれらの言語で書かれた文学作品(各言語の代表的な10作品)を用いた。まずロシア語が属するスラブ語は、全体的に副動詞と本動詞主体は一致させる傾向があるが、中でもロシア語副動詞は使用頻度、また副動詞と本動詞主体が一致している度合いが極めて高い。次にスラブ語以外のヨーロッパ諸語は副動詞の使用頻度がロシア語ほど高くなく、また本動詞主体を一致させる度合いが低い。最後にアジア地域の言語ではロシア語よりも副動詞形態が多様で使用頻度が高いが、本動詞主体を一致させる度合いが低い。これらのことからロシア語副動詞は副動詞と本動詞主体を一致させることが普遍的に認められていると言える。そこでこのような厳格な副動詞の特徴を一般言語理論でトピックとなっている不可分性(inalienability)を解明するクリテリオンとして採用した。不可分性については言語研究の様々な分野で行われている。今回不可分性のスケールとして人間の内的特徴、身体特徴、衣類、親族、愛玩動物、人間の住居を提案し、副動詞主体が所有者となり、その所有物が本動詞の主体になるという副動詞構文を取り上げ(副動詞の語順を固定)、その許容度を調べた。その結果、不可分性の高い所有物の場合の方が、不可分性の低い場合よりも所有者は副動詞の主体になりやすい傾向があり、さらにこの傾向は話し手(書き手)の所有物に対する心的態度が強いときに顕著に現れることが明らかになった。
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