2006 Fiscal Year Annual Research Report
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17520306
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
北原 博雄 聖徳大学, 人文学部, 助教授 (00337776)
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Keywords | アスペクト / 限界性(telicity) / 程度修飾(degree modification) / 形容詞 / スケール意味論(scalar semantics) / 動詞句 / 副詞 |
Research Abstract |
程度修飾(degree modification)機能を持つ語や句を程度句(degree phrase)と言う。本年度は、動詞(句)と程度句との意味的関係、動詞(句)の限界性(telicity)と形容詞の基準値との相関性について以下の点を明らかにした。 (1)程度句は、I類(「とても」の類)、II類(「かなり」の類)、III類(「たくさん」の類)、IV類(「ほぼ」の類)、V類(「決して」のような否定呼応の類)に分類できると仮定し、このうち、本年度は、I〜III類を中心に研究を行った。 (2)存在動詞「ある」と程度句の共起可能性は、II、III類は問題ないが、I類では制限がある。「とてもペンがある」は奇妙だが、「とても栄養がある」は適格である。I類は、状態概念を持つ句を修飾対象とすると一般化できる。この一般化は、「とても悲しい/悲しむ」が適格であることからも支持される。また、I類は、「たくさん」、「よく」など量を表す句を修飾できるので、それらを含意すると解しうる場合「彼はとても働く」のように適格になる。 (3)II、III類は出来事を表す動詞と共起すると複雑な様相を呈する。限界的な動詞と共起すると「かなり割った/割れた」のように他動詞であれば目的語の数量の程度を、自動詞であれば主語の数量の程度を表す。II、III類は「ある」と共起しても主語の数量を表せる。また、「かなり温まった/温めた」では、前述の意味の他に出来事終了時の状態即ち温かさの程度も表す。一方、非限界的な動詞と共起すると、「かなり走った/押した」のように時間的、空間的な行為量を表す。時間的な行為量は他動詞の限界動詞と共起した場合にも表せる。以上のメカニズムを解明した。 (4)日本語の、形容詞から派生された動詞はopen-scaleの形容詞から派生されたものが多い。このことと結果構文に現れる二次述語のscale構造を、日本語、英語、ロマンス語の間で比較した。 (5)(4)との関わりから、移動構文における着点句の共起可能性についてもスケール意味論の観点から日本語、英語、ロマンス語の間で対照研究を行った。 本年度は、日本語学、言語学に関する複数の事典の執筆などが重なり、論文作成は、現在投稿中の1本だけである。来年度は、本年度の研究成果を世に問うべく、複数の論文執筆を行う予定である。
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