2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520306
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
北原 博雄 Seitoku University, 人文学部, 准教授 (00337776)
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Keywords | アスペクト / 限界性(telicity) / 程度修飾(degree modification) / 形容詞 / スケール意味論(scalar semantics) / 動詞句 / 副詞 |
Research Abstract |
程度修飾機能を持つ句を程度句は、I類(「とても」の類)、II類(「かなり」の類)、III類(「たくさん」の類)、IV類(「ほぼ、完全に」の類)、V類(「決して」のような否定表現と呼応する類)に分類できるという作業仮説の下、本年度はI、II類の程度句が修飾できる場合とそうでない場合が見られる動詞の性質の解明を目指した。たとえば、「子供がとても2階に上がる」は不自然だが「成績がとても/かなり上がった」は自然である。「子供がかなり2階に上がった」は自然だが、この文の「かなり」は「上がる」を修飾しておらず「子供」の数量の程度を修飾している。以上の観察は、「2階に上がる」が移動構文で「成績が上がる」が状態変化構文だと説明できるが、この説明は、両構文の共通点・相違点を明らかにすることを要請する。 まず、移動動詞句はその中に現れる空間表現が項である場合に限界的(telic)であることを明らかにした。この一般化には体系的な例外があるが、それは意味的な問題として片付けることができる。これを勤務校の紀要に掲載した。「かなり」の動詞修飾の有無は限界性に敏感である。 次に、「皿が粉々に割れる」のような結果構文と、「太郎が駅に着く」のような着点句を含む着点構文との共通性を研究した。「粉々に」のような結果句、「駅に」のような着点句は多くの共通点がある。たとえば、動詞の表す事象の終了時に関する情報を与える、日本語では限界的な動詞と共起する、「に」で句が終わるなどである。日本語の着点句は、「駅に」(あるいは「駅へ」)の他、「駅まで」でも実現される。しかし、「まで」が使えるのは「継続的(durative)」な事象を表す動詞とだけであり、「瞬時的(punctual)」な動詞とは使いにくい。以上のことを、Wechslerが展開するscalar semanticsに基づくco-extensiveness conditionなどによって、結果構文と比較し、外国語の空間表現・結果句との対照も試みた。これは、2009年度刊行予定の論文集に掲載される予定である。この成果は、程度句の修飾対象の精密な記述したという点で程度句の修飾機能の解明に重要なものになる。
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Research Products
(1 results)