2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520308
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上野 和昭 Waseda University, 文学学術院, 教授 (10168643)
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Keywords | 複合名詞アクセント / アクセントの複合法則 / 曲節 / 平家正節 / アクセント史 / 平曲伝書 / アクセント変化 / 基本アクセント |
Research Abstract |
『平家正節』《口説・白声》所載の譜記から推定される、和語から成る複合名詞のアクセントは概ね以下のようであることが明らかになった。 (1)全体に「式一致(式保存)」はほとんど認められない。前部低起式の複合語も多くは、高起式の複合語アクセントをとる。ただし、一部に複合語が低起式のものもあるが、それらの前部成素は低起式である。 (2)『正節』にあらわれるような古語的・文語的文脈のなかの語彙においては、全体に「体系変化」後の伝統的アクセントが継承されている。同じ江戸期の大坂アクセントを反映する「近松世話物浄瑠璃」の胡麻章からは、もう少し崩れた様相がうかがわれる。 (3){2+2}構造の複合名詞アクセントは、現代京都への過程でHHHH型への移行が顕著に認められる。 (4){2+3}構造の複合名詞アクセントは、HHHHL型とHHLLL型とにまとまってあらわれる。前者は古来その型であり、後者はLLLHL>HHLLLの変化を軽たものと推定されるもので、その「伝統性」は顕著である。 (5){2+3}構造の複合名詞アクセントは、近世中期の京都アクセントを反映する《白声》において、HHLLL型へ集中する傾向をみせる。また、現代京都ではその多くがHHHLL型に移行している。 (6){3+3}構造の複合名詞アクセントでも、全体的にHHHHHL型・HHHLLL型という伝統的なアクセント型が優勢で、《白声》ではHHHLLL型に傾く様相がみられ、現代京都ではHHHHLL型になりがちである。 (7){3+2}構造の複合名詞アクセントについては、必ずしもその史的変化を追跡できないが、他の構造の複合名詞アクセントの動きから推すに、その「伝統性」は維持されていると推定される。
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Research Products
(1 results)