2006 Fiscal Year Annual Research Report
比叡山西塔北谷正教坊聖教を巡る訓点資料の基礎的研究
Project/Area Number |
17520310
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
宇都宮 啓吾 大阪大谷大学, 文学部, 教授 (40257902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村川 猛彦 (田中 猛彦) 和歌山大学, システム工学部, 講師 (90304154)
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Keywords | 訓点資料 / 西教寺 / 天台聖教 / 比叡山西教坊 |
Research Abstract |
従来より纏まった形ではその全体像を把握し難い天台宗系統の訓点資料の研究を行ない、現在は天台真盛宗総本山西教寺の聖教に注目して、天台宗山門派の聖教を個別に調査して来た。 その結果として、前年度においては西教寺正教蔵に存する訓点資料の全ての抽出とその書誌的データの目録化、そして、それらに基づく南北朝期以前の訓点資料に関する分析を行ない、そのことを踏まえた上で、比叡山西塔北谷正教坊聖教の根本を形成した天台僧舜興が関与していた(比叡山葛川の総一和尚)葛川明王院聖教の調査とデータ整理を中心として行ない、本聖教の目録化と訓点資料の分析を進めてきた。現在、基本的な書誌データは調査・入力共に終了し、来年度に向けて、現在点検作業に入っている。 葛川明王院聖教における訓点資料に関しては、院政期加点の東大寺点資料も見出され、天台宗山門派と真言宗小野流との関わりについて示唆を与えるものと考えられる。本年度の成果を踏まえ、更に詳細な検討が必要となる。 また、この諸宗交流の問題については、今回、「鳥羽壇所を巡る訓点本流布の問題-智積院新文庫蔵『胎蔵界念舗儀軌』院政期点の分析を通して-」(『智山学報』36)において、烏羽院政下の諸宗交流の問題を分析し、訓点本やヲコト点の流布に政治的問題の関わることを指摘し得た。また、「聖教調査におけるデータの整備を巡る問題-「念仏宗僧運覚」・書誌情報を中心として-」(基盤研究(A)(1)「金剛寺一切経の総合的研究と金剛寺聖教の基礎的研究」報告書)においては、従来、その素性の明らかでなかった院政期の「浄土宗僧運覚」が真言宗小野流の僧侶であり、石山寺文泉房朗澄も「浄土僧」と名乗るなど、院政期の真言宗小野流に浄土教学の環境が存したことを指摘し、諸宗交流の問題は、もはや単一聖教のみの分析に留まらない幅広い分析の必要性が明らかになった。 その意味でも、従来より纏まった形ではその全体像を把握し難い天台宗系統の聖教研究の意義が浮かび上がるところであり、諸宗交流・天台系・浄土系聖教を視座に入れた研究の必要性を痛感する。その為、この度の調査を踏まえ、また、地域との信頼関係を築きながら調査を幅広く進めているところである。 また、本研究の成果を踏まえ、聖教データの作成をも進め、聖教データベースの作成、系図データベースの作成も進めているところである。
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Research Products
(8 results)