Research Abstract |
本研究は,英語のリスニングに影響を与える情意的変数として従来認められていた不安に代わる変数として,新たに,「リスニング・ストレス」という,これまでの不安も含めた,より包括的な構成概念を仮定し,その構成概念としての妥当性を検証し,「リスニング・ストレス」の生起のメカニズムを解明しようとするものである。 初年度である平成17年度は,従来認められていた外国語学習不安及びリスニング不安に関する先行研究を精査し,第二言語習得/外国語学習における不安要因の説明的妥当性の不備を明らかにした上で,心理学における不安及びストレスに関する研究を渉猟し,特に,Spielberger(1972)が定式化した不安に関する知見と,Lazarus and Folkman(1984)によるストレス理論に基づき,「リスニング・ストレス」の構成概念の理論的定義を策定した。その上で,日本人大学生を被験者とした英語のリスニングにおけるストレス生起実験の結果と,英語圏(アメリカ)で実施された短期語学研修に参加した日本人大学生を調査協力者として行ったストレスの質と量に関する内省報告及び質問紙調査の結果をそれぞれ質的に分析し,「リスニング・ストレス」の構成概念モデルを構築した。さらに,上記の被験者及び調査協力者よりも,より強いストレスを長期にわたって経験していると推測される英語圏(アメリカ)の大学に在籍する日本人留学生を対象に,リスニングのストレスに関しての内省報告と質問紙調査を実施し,その結果を同じく質的に分析し,「リスニング・ストレス」の構成概念モデルについて,特にその中心となるストレスの認知的評価のプロセスの明確化を試みた。これらの研究結果から,「リスニング・ストレス」の心理的実在性は十分に認められ,その構成概念としての妥当性は検証されたと言える。
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