2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520419
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
功刀 俊洋 Fukushima University, 行政政策学類, 教授 (60153318)
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Keywords | 日本史 / 戦後政治 / 革新自治体 / 革新市長 / 東北地方 |
Research Abstract |
平成19年度は、山形県酒田市と秋田県本荘市を調査対象都市に設定し、市立図書館所蔵の「市政だより」、「市議会史」「荘内日報」「由利タイムス」および小山孫次郎、佐藤憲一の両社会党系市長の関連文献を検索・収集した。また、その分析結果を平成18年度に調査した京都府宇治市、舞鶴市の社会党市長・市政と比較考量した。 この比較研究によって判明したことは、第1に、東北地方と京阪神地方の社会党系市長・市政の共通点として、1950年代から当選しつづけた先駆的な革新市政は、市長が住民に直結する広報公聴活動を除けば、1966年まで革新自治体らしい独自・先駆行政を展開できなかったことである。その理由は、保守優位の市議会による抵抗よりも、1950年代後半は財政再建過程であることによる政策展開の制約、1960年代前半は新産業都市指定をめぐる地方都市間の誘致競争に典型的に現われたように、地域社会からの工業開発圧力であった。革新市長は、住民の福祉や生活向上、公害防止に着手したかったが、社会党市議や市労連を含めて、市政全体に「企業誘致-工業開発-雇用確保」の強い要請があり、福祉や環境政策をあとまわしにすることを余儀なくされた。従来、一部の自治体問題・政治学研究者の間には、1963年の飛鳥田一雄横浜市長の登場によって「革新自治体の時代」が開幕したという見解が流布されてきたが、革新市政の実態を検証してみれば、これは誤りであろう。 第2に、東北地方の多くの革新市長が飛鳥田主催の革新市長会に参加したのに対し、1960年代前半までに当選していた京阪神地方の革新市長は、革新市長会に参加しなかった者が多かった。この理由は、東北地方の社会党は左派中心で最左派の飛鳥田に親和的だったのに対し、京阪神地方は民社党・全労系労組と社会党右派(江田派・河上派)を基盤にした市長が多かったという派閥的要因と、東海-近畿-瀬戸内の地方都市では、既成工業の合理化と新興工業開発が現実に進行しており、「合理化・開発=保守化・中央依存」圧力が東北地方より強かったという経済的要因であった。 これらの比較研究の結果は、別冊の報告書および下記の2つの論文として発表したところである。
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Research Products
(2 results)