2006 Fiscal Year Annual Research Report
日本近代における地域史像の構築-郷土史家の歴史学的方法論と構想力-
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17520427
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
羽賀 祥二 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (30127120)
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Keywords | 林金兵衛 / 津田応助 / 郷土史 / 地誌 / 歴史学的方法論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、津田応助(愛知)・阿部栄之助(岐阜)ら東海地域の著名な、精力的な活動をおこなった郷土史家を研究対象とし、彼らの経歴・資料収集の手法・著作の内容分析を行い、その歴史学的方法と地域史学構築へ向けた実践活動を明らかにすることにある。 今年度は昨年度購入した『林金兵衛家文書』の整理を実施した。林金兵衛は幕末から明治前期の地域名望家であり、尾張藩の尊王運動への参加、地租改正反対運動の指導者として著名である。彼については20世紀前期の愛知県を代表する郷土史家・津田応助による伝記研究や郷土史で注目された。彼の郷土史研究の成果である『贈従五位林金兵衛伝』や『東春日井郡誌』、『小牧町史』などの編纂内容や構成を再検討する格好の史料群であることが確認できた。またこの史料群のなかには明治初年の愛知県による地誌編纂関係史料も存在し、郷土史編纂の歴史過程を研究する材料を得ることができた。これにより津田の郷土史研究が、それ以前の地誌編纂といかなる関係を持っているのかを検討する材料を得ることができた。 また、『林金兵衛家文書』の整理作業のなかで、寛政期以降先代の林金兵衛の地主経営関係史料、子供で代議士となった林小参の政治活動に関係する史料も確認でき、とくに林金兵衛自身の県会議員時代の日記を発見できたことは、明治前期の愛知県政の動向を研究する貴重な史料を提供できる。 整理にあたっては「近代史料学」の授業教材としても活用し、受講生に史料整理の方法を理解させ、同時に史料の読解力を培うために利用した。
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Research Products
(2 results)