2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520450
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
山室 建徳 帝京大学, 理工学部, 講師 (80158261)
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Keywords | 近代日本史 / 国民意識研究 / 日露戦争 / 肉弾三勇士 / メディア分析 / 軍神 |
Research Abstract |
本年度は、日米開戦以前の日本社会でよく使われた用語の内、特に「軍神」という言葉に焦点を絞って調査と分析を行った。「軍神」と呼ばれた人々が、どんな特徴を持つ存在として賞讃されたのかについて、明治から昭和初期にかけて生じた変化を探ることで、この時代の日本国民が共有した価値規範を解き明かそうとしたのである。 このために、「軍神」が誕生した時期の新聞・雑誌の記事を、国立国会図書館・東京都立中央図書館・栃木県立図書館で閲覧し、複写を行った。また、「軍神」の出身地であった大分・長崎・広島などへ出張し、図書館や資料館などで調査を行った。また、あわせて、広島・長崎では原爆投下に関する遺跡等も見学して、この時代への視野を広めることに努力した。 以上のような調査を踏まえて、「軍神」像の変貌について多くの裏付けを得ることができた。まづ、日露戦役の際に初めて誕生した「軍神」、つまり海軍の廣瀬武夫中佐と陸軍の橘周太中佐は、日頃の行いが立派で父性的な存在である佐官級の指揮官が、思いも掛けないが感動に満ちた戦死を遂げるという過程を経て誕生している。 ところが、昭和に入ると、尉官級以下の若年軍人が、集団で自らの死とひきかえに戦果を得るために戦死するという新しい軍神像が登場する。そのさきがけとなったのが、満洲事変と共に起きた上海事変で戦死した肉弾三勇士である。明治の軍神とは明らかに異なる彼らと廣瀬・橘を比較することで、明治日本と昭和日本における国民意識の違いを分析する手がかりを得ることができた。以上のような変化の過程について、詳細な史料を集めることができたのが、本年度の大きな収穫であった。
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