2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520450
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Research Institution | TEIKYO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
山室 建徳 帝京大学, 理工学部, 講師 (80158261)
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Keywords | 軍神 / 国民意識 / 満洲事変 / 大東亜戦争 / 特別攻撃隊 |
Research Abstract |
本年度も前年度に引き続き、「軍神」という言葉に焦点を絞って調査と分析を行った。当初の計画ではもう少し幅広く用語分析を行う予定であったが、「軍神」という用語に絞っただけでも、戦時期日本の意識を探る大切な手がかりが、数多く発見できたからである。 平成17年度には明治期の「軍神」を中心に調査分析を行ったが、本年度は昭和期の「軍神」について資料蒐集と研究を行った。このために、「軍神」が誕生した時期の新聞・雑誌の記事を、国立国会図書館・東京都立中央図書館・栃木県立図書館などで閲覧し、複写を行った。また、「軍神」に関わる地域である福岡・鹿児島・沖縄などへ出張し、図書館や遺跡などで調査を行った。 以上のような調査を踏まえて、昭和期の「軍神」像の変貌について、より詳しい見通しを得ることができた。昭和に入ると、尉官級以下の若年軍人が、集団で自らの死とひきかえに戦果を得るために戦死するという新しい軍神像が登場する。そのさきがけとなった肉弾三勇士は、特に当時の小学生に大きな衝撃を与えたこと、また彼らの母親が注目を浴びた点に特徴がある。この時期の小学生は、後に特攻隊員となる世代である。そして、女性も戦争遂行上欠かせない存在とみなされるようになったのである。真珠湾攻撃の際の九軍神は、肉弾三勇士の延長上の存在である。彼らは長期に亘って死の覚悟をしていた点が称賛されたが、こうした意識こそが戦争末期にいたり多数の特別攻撃隊員を産み出す土壌となったのである。さらに、前線で戦死した山本五十六とアッツ島で玉碎した山崎軍神部隊についても、詳細に検討することが出来、「軍神」という言葉の持つ歴史的な背景をより深く理解できるようになった。 なお、本研究の成果は、平成19年中に単行書として刊行する予定である。
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Research Products
(2 results)