2006 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本における「家」意識の崩壊と、非婚・少子化との連関性、および天皇制の変質
Project/Area Number |
17520452
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Research Institution | Shizuoka University of Welfare |
Principal Investigator |
小田部 雄次 静岡福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (30249255)
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Keywords | 華族 / 女性 / 近代日本 / 天皇制 / 家制度 / 戦争 / 結婚 / 男系女系 |
Research Abstract |
本年度は三つの分野の整理をした。第一は、近代日本の天皇および皇室の全体像を把握する。このため、幕末維新から現代までの皇室制度についてまとめ、さらに皇室における女性の位置づけをした。その成果は、『天皇・皇室を知る事典』(東京堂出版)の中に盛り込まれる予定である。幕末維新から現代までの皇室制度を概観すれば、皇室がいかに家族主義を重視してきたかがわかるし、一方で、一般社会では家族のあり方が変容し、とりわけ戦後社会においては、その経済発展と連動して、家族崩壊の危機が増大している。そうした皇室と一般社会の家族形態のベクトルの食い違いが、現段階では発生していると認識される。第二は、昨年まとめた華族社会における女性のあり方を、様々な形態をとりあげながらまとめた。とくに男系を義務づけられた華族社会において女性がどのような役割を担っていたのかを明らかにした。その際、種々の形態があり、事例を分類する必要があるが、単線の男系社会を維持するために、網の目のように複雑化した女系社会もまた、硬貨の表裏のように存在している点はみのがせないと思う。とりわけ、華族社会は女系による閨閥社会であり、そのことによって同族化を進め、実体化していたことは間違いない。華族社会の家族は、ある意味で、女系によって支えられた面もあったことは特筆したい。この成果は、『華族家の女性たち』(小学館)として刊行する予定である。第三は、皇族社会の女性の一例として、韓国王室に嫁いだ李方子の事例を調査し、その特質をまとめた。李方子には義理の妹にあたる徳恵がおり、彼女は日本の華族家と国際結婚を強いられたのであるが、そうした国際結婚の意味と、日本の家族制度に与えた影響などを考察している。この成果は、『知方子』(ミネルヴァ書房)にとりいれていく予定である。なお、今年度は、上記三点をまとめながら、さらに皇族社会そのものを整理し、同時に皇族家の女性たちの存在形態をまとめていきたい。そうした作業の上で、近代日本における家族制度の変遷を皇室のあり方との関連で把握し、さらには現在の皇室と一般社会との間の「絆」を家族制度に対する相互認識から分析していきたい。
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Research Products
(3 results)