2007 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本における「家」意識の崩壊と、非婚・少子化との連関性、および天皇制の変質
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17520452
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Research Institution | Shizuoka University of Welfare |
Principal Investigator |
小田部 雄次 Shizuoka University of Welfare, 社会福祉学部, 教授 (30249255)
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Keywords | 華族 / 女性 / 近代日本 / 天皇制 / 家制度 / 戦争 / 結婚 / 男系女系 |
Research Abstract |
昨年度は、近代日本の天皇および皇室の全体像を把握することを目的として、幕末維新から現代までの皇室制度についてまとめ、さらに皇室における女性の位置づけをした。その成果は、『天皇・皇室を知る事典』(東京堂出版)の中に盛り込まれている。幕末維新から現代までの皇室制度を概観することで、皇室がいかに家族主義を重視してきたかがわかる一方で、一般社会では家族のあり方が変容し、とりわけ戦後社会においては、その経済発展と連動して、家族崩壊の危機が増大している。そうした中で、逆に皇室が一般社会の家族形態の変化の影響を強く受け始めて、皇位継承問題などに大きな課題を投げかけていると考察される。また、一昨年まとめた華族社会における女性のあり方を、様々な形態をとりあげながらまとめ、とくに男系を義務づけられた華族社会において女性がどのような役割を担っていたのかを明らかにした。この成果は、『華族家の女性たち』(小学館)として刊行された。これと関連して、皇族社会の女性の一例として、韓国王室に嫁いだ李方子の事例を調査し、その特質をまとめた。李方子には義理の妹にあたる徳恵がおり、彼女は日本の華族家と国際結婚を強いられたのであるが、そうした国際結婚の意味と、日本の家族制度に与えた影響などを考察し、この成果は、『李方子』(ミネルヴァ書房)にとりいれていった。こうした成果に基づき、本年度は、近代皇族そのものの歴史と社会的役割、さらには皇族妃の位置づけとその身分的変遷、機能的変化をまとめている。とりわけ、いわゆる一般家庭から皇族妃になる事例が定着しはじめた現代において、そのことが皇室の家族関係へどのような影響を与え続けているのか、そしてその影響が一般家庭にどのように反映されているのかを考察している。この成果は、『皇族』(中公新書)、『皇室に嫁いだ女性たち』(角川選書)の中に盛り込んでいく予定である。 なお、今年度は、最終年度となるため、上記の成果を再構成しながら、近代日本における家族制度の変遷を皇室のあり方との関連で把握し、さらには現在の皇室と一般社会との間の「絆」を家族制度に対する相互認識から分析していきたい。
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Research Products
(2 results)