2006 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀における清,ロシア,ジューン=ガル相互関係史の研究
Project/Area Number |
17520465
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
澁谷 浩一 茨城大学, 人文学部, 助教授 (60261731)
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Keywords | 清 / ロシア / ジューン=ガル / トルグート |
Research Abstract |
本年度は,1712〜15年に清からトルグートへ派遣された使節へのロシア側の対応について研究した。その成果が論文「康煕年間の清のトルグート遣使とロシア」である。清からトルグートへの使節派遣の契機は,トルグートからの使節の来訪であるが,この使節は当時トルグートと密接な関係を築いていたカザン県知事アプラークシンの後押しによってシベリアを通過することができた。これに対して中国貿易を重視するシベリア県知事ガガーリンは清との貿易関係に影響が出ることを恐れてカザン県の対応を批判した。ガガーリンは,清使節の目的は対ジューン=ガル軍事同盟締結にあると考え,清使節を丁重に護送する一方でカザン県に清の目的阻止のためにアユキを説得させるべきことを中央に進言した。この意見に基づき元老院はカザン県に指示を出したが,新任のカザン県知事は,使節護送にさえ非協力的で,アユキへの説得工作等には積極的ではなかった。アユキはその後再度清へ使節を派遣しようとしたが,カザン県はそれを後押ししようとさえした。以上のような地方毎の立場の違い,加えて当時見られた行政上の混乱が,ロシアの清使節への対応に影響を与えた。従来の研究でイメージされてきた清使節に対する組織的な対応は当時のロシアでは不可能だったのである。清使節に対ジューン=ガル軍事同盟締結という密命が存在したことを前提とする先行研究の見方には見直しが必要であろう。この使節はロシアが受入れた「初の清使節」であり,それへの対応がその後の露清関係の基盤となったという視点がより重要である。本研究によって,これまで不十分であったこの使節へのロシア側の対応の実態が明らかとなった。18世紀前半の中央ユーラシア史を総合的に解明するためには,清,ロシア,遊牧勢力それぞれの事情をより明確に把握することが求められる。次年度の課題としたい。
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Research Products
(1 results)