2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520466
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
片岡 一忠 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (50092515)
|
Keywords | 符節 / 空印 / 関防 / 条記 / 九畳篆 / 玉〓篆 |
Research Abstract |
本研究は、明朝の官印制度を中国政治史、官印制度史の中に位置づけようとするものである。本年度の課題は、明朝政治史・中国官印制度に係わる史料文献の収集を行うとともに、明朝に至る官印制度の流れを考察することを主眼とした。 (1)関係史料文献の収集においては、官印制度の密接不可分の関係にあると考える、符節の考察を行った。戦国から漢代において、「符」の役割は官印を補完するものといえる。『周礼』『史記』等の文献にいう「符節」は一個のものではなく、「符」「節」はそれぞれ由来を異にする別個のものであると、考える。符は割り符として、その持参者の身分を保証するものであったが、節は保持者の権威を証明するものであった。それ故に節は漢代から南北朝時代に「使節」として権限を表示したのである。その時代の符の実物として、わが国で唯一その存在が知られる大原美術館所蔵の「銅虎符」を実見し、近年多量に出土する木符との類似性を確認した。また、節の権威性については、明朝における鉄券に反映されていることが推測される。すなわち、皇帝権を表象するものは官印だけでなく、古代から続く節にもみることができる。ただし、その適用範囲は時代とともに限定され、明朝においては皇帝の私的な、または皇城という狭いものになってきたと想定される。 (2)明朝の文献における官印資料は、予想以上に限定されている。「空印事件」に代表されるように、明朝皇帝が官印を官僚統制の道具としたことは知られることであるが、皇帝の玉璽の多さとその使用の区別、一般官印の品級別の詳細な規格、「関防」印のほか、「条記」印の登場、さらに、それまで各王朝ともに、一種類であった印文に用いられる篆書体が、九畳篆のほか、人畳篆、柳葉篆、さらに玉〓篆と、数種類の篆書体が使用されたこと等、多様というか、細かく規定されている。これらは、清朝の官印制度に見られる特徴とほぼ一致する。このことは、先に清朝官印制度を考察した結果、前代(明朝)との比較検討の必要性を指摘したが、その指摘が誤っていなかったといえる。また、次年度に予定される明実録中の官印資料の分析によって、明朝の官印制度が解明されると、中国歴代王朝の官制のひとつとしての官印制度の総体を明確にできると期待される。
|
Research Products
(1 results)