Research Abstract |
本課題についての研究は,下記の海外共同研究者との密接な協力関係のもとに推行中である。 范金民 南京大学・歴史系・教授 研究協力および商業関係訴訟文書研究 阿風 中国社会科学院・歴史研究所・副研究員 研究協力および相続財産権訴訟文書研究范 主として中国社会科学院歴史研究所の蔵する徽州文書のなから,裁判の過程あるいはその結果として作成された告状,訴状,帖文,執照,供招,息状などの文書を抽出し,分析を加えた。同研究所で刊行された『徽州千年契約文書』に影印された文書,とくに本研究の対象となる裁判関係文書については,研究の蓄積が充分でなかったため,文書の標題が不適切であると考えられるものが少なくない。明代の地方官府で用いられていた行政文書については,現存するものが少なく,文書の様式や性格を正確に認識できないためである。岩井は関連資料を検討することによって,裁判関係文書の個々についての様式を検討し,それがいかなる行政・司法手続きのなかで,どの部署(役職者個人であるばあいも多い)からどの部署へ伝達され,どのような情報を伝達するものであるかについて明らかにすることによって,文書の性格とそれに与えられるべき標題が確定されると考えた。こうした検討作業の結果,ほとんどの文書について,文書学的な位置づけを与えることに成功した。現在作成中の裁判関係文書閲覧・検索システムのなかでは,文書の様式に基づく分類をキー情報として付与してある。 清代,とくに18世紀以降の時期については,順天府档案,巴県档案,淡新档案に代表される地方官府の保存文書のなかに大量の裁判関係文書が含まれていることが知られ,すでにこれらを用いた研究が盛行している。しかし,清代前半期の裁判関係文書は,これら地方官府の保存文書のなかに含まれていない。岩井は,阿風の協力をえて,清代前半期の裁判関係文書の収集をすすめ,その一部については,緻密な解読をおこなった。明代の文書との比較をつうじて,裁判制度や地方における治安維持機構が明清時代をつうじてどのような変化を遂げたのかという問題を解明することが期待される。
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