2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520488
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
有光 秀行 東北大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (80253326)
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Keywords | 中世史 / イングランド史 |
Research Abstract |
本年度はまず、中世のダラム司教座聖堂における写本・文書作成活動の実際をさぐる作業のいとぐちとして、歴史叙述者また多様な写本・文書の作成者であったシメオン・オヴ・ダラムそして彼の周辺の人々の活動をあとづけることを、グラースゴウ大学、ダラム司教座聖堂図書室、および大英図書館における各種写本の検討、また予算で購入が可能になったファクシミリ版の写本集Durham Cathedral manuscripts to the end of the twelfth century with an introduction by R.A.B.Mynors, Oxford,1939の検討を通じておこなった。検討の導きの糸となるのはマイケル・ガリックによるシメオンの筆跡研究である。実際に写本をみると、当時の書記たちの、学芸や教会管理の幅広い領域にかかわる活動ぶりが確認されると同時に、ガリックによる書記の同定には問題がのこり、さらなる検討の余地があることがわかった。 上記の司教座聖堂による文書作成活動の中で証書chartersの作成はおおきな分野のひとつをなしているが、とくに「ネイション・アドレス」を切り口にして、7月時点までの検討の結果をリーズ大学における「国際中世研究集会」で報告した(7月13日)のも本年度の実績のひとつである。質疑応答のなかで、文書作成部局の執務のあり方自体に注目する必要性の示唆が得られたことは特に有益であった。 また中世におけるイングランド北部周縁研究に関しては、デイヴィド・ロラソンによる通史的新著や、またとくに流通が限られていて国内で参照困難なキース・ストリンガによる2003年の著作(The Reformed Church in Medieval Galloway and Cumbria)をダラム大学図書館で参照することにより、最近の動向を把握し得た。
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