2006 Fiscal Year Annual Research Report
中世フランスの住空間の構造と機能に関する歴史考古学的研究
Project/Area Number |
17520507
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
堀越 宏一 東洋大学, 文学部, 教授 (20255194)
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Keywords | 西洋中世史 / 中世ヨーロッパ考古学 / 住居史 / 生活史 / 中世城砦 |
Research Abstract |
この研究の課題は、今もなお現存する中世建物と発掘された中世建物遺跡に関する考古学的研究の総括と同時に古文書史料調査に基づいて、6〜15世紀のフランスにおける、世俗の住空間の構造と機能の実態とその歴史的変遷を解明することにある。具体的な研究対象としては、貴族の住居である城、都市民の住居である町屋、農民の住居である農家という3つを中心としている。 平成17年度では、南仏農村遺跡のほか、特に城に関して、ノルマンディー地方のカーンとジゾールの現地調査を通じて、これらの城砦が11〜12世紀の城砦建築の先端例であることを理解できた。このため、本平成18年度には、この方向の知見の充実を計画した。 まず年度前半において、主として文献調査により、中世フランスの城砦建築の発達の過程で、その中心的起源がロワール地方の9世紀以降の王館にあること、1200年前後のフィリップ2世の一連の国王築城政策によって、中世フランスの城の典型的スタイルが確立したことを確認した。このため、本年度の現地調査はロワール地方をその中心とし、2006年9月2〜15日には、ナンシー大学中世考古学研究所での文献の調査収集の後、ロワール地方に残るカロリング期国王館(ドゥエ・ラ・フォンテーヌ)と中世城砦遺跡(ロッシュ城、シノン城、ランジェ城など)に加えて、サン・シルヴァン・ダンジューで復元されている中世初期の城砦の実地調査を行なった。 これによって、城に関して、公的空間であると同時に、城主の住居でもあるというアンビヴァレントな城の機能と実態を、実例と文献史料に即して明らかにすることができた。また、カロリング期の方形の居館が11世紀以降の石造の城の天守に発展すると同時に、1200年直前から、円形の石造塔を中心とする構造に転換することを実例に即して認識することができた。その反面、都市の町屋と農村の農家に関しては、本年度は研究を進めることができなかったので、これらは来年度の課題としたい。
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Research Products
(1 results)