2007 Fiscal Year Annual Research Report
帝政ロシアにおける「国民」形成の契機としての日露戦争・第一次革命研究
Project/Area Number |
17520508
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
土屋 好古 Nihon University, 文理学部, 教授 (70202182)
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Keywords | 西洋史 / 帝政ロシア / 日露戦争 / 第一次革命 |
Research Abstract |
本年度は3ヵ年の研究の最終年度に当たり、これまでの研究成果を総括することに重点を置いた。日露戦争によって明らかにされだロシアの専制体制・帝国構造の矛盾に対して、自由主義者が国民代表制度と憲法制定という要求をつきつけていくが、それは19世紀半ばの大改革以来潜在していた「国民形成」という課題と照応していた。本研究では、この点を明らかにすると同時に、自由主義者の立憲体制要求の背後に、日露戦争における対日認識があったことを明らかにした。すなわち、明治維新以降立憲君主制のもと国民国家体制を構築した日本と対峙することで、ロシアの自由主義者は、改めて「国民精神」の必要性を認識したのである。かくして、ロシアの自由主義者は、無制限専制体制に対して、「性と民族の別なき普通・直接・平等・秘密選挙による国民代表議会」を対置し、それによってロシアに国民的な統一をもたらそうとしたのであった。これが彼らの第一次革命の課題になったが、第一次革命のもう一方の主体であった労働者や農民は、自由主義者の思惑とは別に、彼らの状態改善を目指す社会的改革を希求し、それが第一次革命における反対勢力の分裂につながったのであった。本研究が明らかにした以上の見解によって、日露戦争から第一次革命への歴史は、19世紀半ばからソ連期におよぶロシアにおけるネーション・ビルディング(国民形成)の歴史過程のなかに位置づけられることが可能になった。また同時代的に国民形成をおこなった日本との比較は、資本主義的世界体制の半周縁部における国民形成のあり方への理解を深めることにも貢献していると考える。これらが本研究の成果の大きな意義である。
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Research Products
(2 results)