Research Abstract |
本研究の最終年度である今年度は諸般の事情から,研究費を当初予定していた旅費に充当することができず,研究費のほとんどを書籍の購入に当てることとなった。本研究には,ヨーロッパ統合とユーラフリカという二つの大きなテーマがあるが,これらを軸に20世紀のフランス史を読み直す過程で,想像以上にさまざまなサブテーマに遭遇した。現代史で言えば,本年度の目的にしていた「フランス語圏」もそうだが,時代を遡れば,そもそもユーラフリカ概念が誕生する大きな契機となった第一次世界大戦を,植民地史との関連でどのように読み解くのか,あるいはユーラフリカが議論された戦間期はどうか,という論点も浮上してきた。さらにヨーロッパ統合という観点からするなら,戦問期のみならず,第二次大戦後の世界をどのように捉えなおすのか,といった議論もなされるべきであろう。そうしたテーマに現実に取り組む必要性が認識された今年度に,それらの基礎資料となる多くの文献を購入できたのは,きわめて有意義であった。とりわけ本研究の視点からするなら,以上は「サブテーマ」であるが,言うまでもなく,それぞれが今日的重要性をもつ,きわめて大きなテーマであるだけに,なおさらである。つけ加えるならば,勤務先から一年間の研究休暇を得て,フランスに半年ほど滞在できたことも,史・資料の収集という意味では効率がよかった。 一年を振り返って,研究成果の点数自体は少なかったものの,本研究の仕上げとなる原稿を脱稿することができた。どのような媒体で活字にするかはこれから検討していくが,報告書の冒頭に掲載した論文は,まさに本科研費研究の最大の成果である。この過程で認識された新たな問題群に取り組んでいく出発点としたい。
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