2005 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀前半のアイルランド農村における貧困と飢饉の再検討
Project/Area Number |
17520512
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
高神 信一 大阪産業大学, 経済学部, 教授 (30268239)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武井 章弘 大阪学院大学, 経済学部, 助教授 (70226976)
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Keywords | 救貧法 / アイルランド / イギリス / リネン工業 / 綿工業 |
Research Abstract |
研究代表者の高神は、アイルランドの公的救貧システムをイギリス(ブリテン)政府の側から調査した。すなわち、どのような経緯でアイルランドに救貧法が導入されたのかに焦点を当て研究をすすめた。アイルランドでは1838年に救貧法が導入されたが、それに先立って、G・ニコルズが3回にわたって、アイルランドで調査をおこなった。この報告書はイギリス議会史料の一端として慶応義塾大学図書館に所蔵されており、高神は17年度にはこの報告書の分析を主としてすすめた。また、イギリス議会の議事録を参照することによって、どのような経過で救貧法がアイルランドに導入されたかを調査した。イギリス議会は、アイルランド人の貧困者がイギリス国内に流入し、国内の治安の悪化やイギリス人労働者の労働条件の悪化を危惧していた。そのいっぽう、アイルランド人の地主は救貧法の導入による、税の負担を危惧していた。 武井は、ダブリン大学留学中の収集した史料にもとづいて、つぎの点を検討した。19世紀アイルランド経済は工業化に失敗したとされるが、ベルファストを核とした北東地域はリネン工業の発展によってヨーロッパ最大のリネン工業地域に成長した。19世紀初頭のベルファストではリネン工業よりも綿工業が発展していたが、マンチェスター綿工業との競合を避けてリネン工業に産業転換したことがその成功の要因となった。リネン工業による都市部の工業化は、綿工業と同じく紡績部門の機械化からはじまったので、農村から紡績部門の副業収入を奪い、反対に織布部門の副業収入を増加させた。
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