2007 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀前半のアイルランド農村における貧困と飢饉の再検討
Project/Area Number |
17520512
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
高神 信一 Osaka Sangyo University, 経済学部, 教授 (30268239)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武井 章弘 大阪学院大学, 経済学部, 教授 (70226976)
勝田 俊輔 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (00313180)
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Keywords | アイルランド / 飢饉 / 貧困 / 救貧法 |
Research Abstract |
高神はイギリス議会におけるアイルランド救貧法の審議過程を研究した。1837年2月、ホイッグ政府はイギリズ下院にアイルランド救貧法案を上程した。法案はイングランド救貧法にもとづいており、貧民は救貧院で救済され、院外救済は禁止された。法案の第二読会は同年4月28日に開催され、委員会審議は5月8日から6月5日におこなわれたが、6月20日にイギリス国王ウィリアム4世(William IV)が崩御したため、6月5日の委員会審議をもって、法案は廃案となった。だが、ヴィクトリア女王(Queen Victoria)の即位と総選挙を経て新たに成立した議会に、メルバーン内閣はあらためてアイルランド救貧法案を上程した。そこで便宜上、1837年2月に上程された法案を「第一次アイルランド救貧法案」、1837年12月に再上程された法案を「第二次アイルランド救貧法案」と呼ぶことにする。第二次法案の第二読会は1838年2月5日に開催され、その委員会審議は2月12日から4月10日までおこなわれ、法案は4月30日に第三読会を通過した。そして法案の審議の場は上院に移る。上院での審議は5月1日からはじまり、5月21日に第二読会を通過し、5月28日から7月6日までの委員会審議を経て、7月9日に第三読会を通過した。上院において法案に修正が施されたため、7月24日に下院は法案の修正をめぐって審議をおこない、上院による修正を承認した。そして7月31日、法案はヴィクトリア女王の裁可を得て正式に成立した。 武井はアイルランド大飢饉の前提条件として、アイルランドにおける脱工業化問題を検討した。19世紀アイルランド経済は工業化に失敗したとされるが、ベルファストを核としたアルスター地方北東地域はリネン工業の発展によってヨーロッパ最大のリネン工業地域に成長した。だが、リネン工業の成長過程は,特定地域の工業化とその他の地域の脱工業化を現出させる過程でもあった。そこでどのようなプロセスを経てアイルランドでは脱工業化が進行したのかを明らかにした。 勝田は1822年のアイルランド飢饉を実証的に明らかにした。政府筋によれば、困窮者は全土で100万人に達したとされる。当時のアイルランドの人口は700万人弱であったが、飢饉は全32州のうち10州のみでみられた現象であり、これら10州では困窮者は人口の約半分に達したとされる。これらの数字が正しいかどうかを実証的に明らかにした。1822年の初夏には各地ごとの救恤委員会が組織されて義捐金募金をおこなういっぽう、ダブリン総督府は大規模な公共事業をおこない、飢饉に対応しようとした。
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Research Products
(3 results)