2006 Fiscal Year Annual Research Report
ストックホルムから見た近世スウェーデンと環バルト海世界の研究
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17520514
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Research Institution | Asahikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
根本 聡 旭川工業高等専門学校, 一般人文科, 助教授 (80342442)
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Keywords | スウェーデン / ストックホルム / バルト海 / 首都 / 鉄 / 植民地貿易 / ステープル都市体系 / 鉱業 |
Research Abstract |
本年度に得られた新しい成果には主に四点ある。第一に、ウップサラ大学助教授のレオス・ミュラー氏による諸論文を編集して『近世スウェーデンの貿易と商人』と題する一書に翻訳上梓したことである。本書は近世国際商業をスウェーデンから見た独自の視点を背景に、同国の貿易形態の他に、国内商業の主要形態、鉄の生産と流通、対オランダ商業ネットワーク、植民地貿易等を扱うことによって、近代世界システム論にも関連する論点、例えば植民地物産と消費文化の問題も包摂している点に特色がある。一般に近世国際商業の機能と形態に関する研究は、商業・経済次元をこえて、宗教・文化面をも加味した複合的な研究成果となって昨今隆盛であるが、スウェーデンが占める役割や意義については本邦では全く研究がないため、本書は同国経済史の重要な動向を紹介したにとどまらない意義を有する。これと関連して第二に、本書の別の成果には、スウェーデン経済史がわが国ではあまり知られていないので、それに寄与する所も少なくない点がある。なお、秋に東京大学と京都産業大学でスウェーデン経済史の泰斗ラルシュ・マグヌソン教授が招聘され、同教授を中心とした研究会が開催されるなど、かつてない北欧経済史の進展が見られだ。第三に、近世スウェーデン史に関する若手による研究書(入江幸二著『スウェーデン絶対王政研究』)の刊行に即応して書評の場を与えられたことがある。そこで提起された諸問題に対して、国制、税制、軍制、土地制度の相互連関の必要性を指摘した。第四に、12月、「北欧貿易と市場」と題して、近世スウェーデン王国のステープル都市体系とストックホルムの首都化の問題を中心に報告を行った。目下論文にまとめている最中である。最後に、以上の4点を、並行して進めているストックホルム都市史研究に結合させることを通じて、バルト海域対外関係史へと総合する準備は整えられたことを付言する。
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Research Products
(2 results)