2007 Fiscal Year Annual Research Report
ストックホルムから見た近世スウェーデンと環バルト海世界の研究
Project/Area Number |
17520514
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Research Institution | Asahikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
根本 聡 Asahikawa National College of Technology, 一般人文科, 准教授 (80342442)
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Keywords | スウェーデン / ストックホルム / バルト海 / 首都 / 鉄 / ステープル都市体系 / 商業令 / 鉱山業 |
Research Abstract |
本年度に得られた成果は主に三点ある。第一に、論文「近世スウェーデン王国のステープル都市体系とストックホルムの首都化過程」『市場史研究』第27号で次のことを明らかにした。すなわち、16〜17世紀に、スウェーデンが近世国家建設事業を企てるなかで、鉄という資源が果たした意義が大きく、しかもその鉄の輸出港である港町ストックホルムが首都へと成長を遂げると同時にバルト海貿易のメトロポールとなってヒト・モノ・カネをこの首都に集積することができたことが、当該期に軍事大国として北方ヨーロッパに君臨することに成功した主な要因であったことについて考察した。さらに、当時のスウェーデン〓権が発布した三つの商業令を追いながら、ストックホルムを中心とした、課税制度の刷新、つまりは王室財政の収入確保のためのヒエラルキーであるステープル都市体系を樹立しようとした政策が、スウェーデンによるバルト海支配の成就を決定づけた有力な要因であることを明らかにした。第二に、口頭発表「近世スウェーデンにおける製鉄業と環境問題」を第10回日本ハンザ史研究会にて行ない、16〜18世紀中葉に至るスウェーデン製鉄業が抱えた次の問題点を明らかにした。すなわち、半原料である銑鉄をつくる鉱山農民と輸出品の棒鉄を扱うブリューク主の棲み分けがもたらす社会問題への対応と、高い品質を維持するための生産制限を行なうことによる環境問題への対応についてである。この国家による農民と環境への顧慮が、スウェーデン製鉄業の制度的特色となっていることについて論じた。第三に、夏と秋の二回の国際商業史研究会にて、主に近世オランダのバルト海貿易と18世紀スウェーデン社会史に関する最新の研究動向をおさえることによって、近世スウェーデンの資源国としての重要性と環バルト海世界の構成者としての役割を、時間的空間的に広い文脈のなかに位置づけるための総括作業を行なった。
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Research Products
(2 results)