2005 Fiscal Year Annual Research Report
図像構成からみた高句麗前期の壁画古墳の特性と被葬者の出自の研究
Project/Area Number |
17520532
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
南 秀雄 (財)大阪市文化財協会, 調査研究部, 事業企画課長 (70344380)
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Keywords | 高句麗壁画古墳 / 図像構成 / 模写 / 出自 |
Research Abstract |
本研究では、高句麗前半期の壁画古墳を対象に、図像の配置や組合せなどの詳細な検討から壁画の構成を明らかにし、石室構造と組合わせて墓室の空間設計を総体的に解明する。それによって、中国の後漢・魏晋南北朝期の壁画古墳から、どれほど独自の設計原理に則って高句麗の壁画古墳が作られたのかを明らかにし、合わせて被葬者の出自の研究に寄与する。 本年度は、まず壁画関係の文献資料の収集に努めた。中国の漢代以降の最近の壁画古墳関係の発掘調査報告書と、日本・韓国で刊行されている関連資料を収集した。また、高句麗壁画古墳に影響を与えた中国北朝の壁画古墳の研究のため、山西省考古研究所馬昇副所長に、壁画古墳が発達する中国山西省の調査研究成果を公表してもらう研究会を行い、朱雀などの四神図や日月図などで最新の知見を得た。 また本研究では、発掘調査報告書・写真・模写などにより、高句麗壁画古墳の展開図の作成を行い、それを基に個々の古墳の図像構成を分析、検討する。この展開図の作成を補う資料として、東京大学工学部建築学科所蔵の第2次世界大戦前の高句麗古墳壁画模写資料の調査を行った。調査したのは、江西大墓・江西中墓・双楹塚の3古墳の模写である。この模写資料の観察によって、写真では不明な所まで見て取れること、双楹塚のように現地でも見ることが非常に難しい資料を観察できたこと、現在では褪色している部分まで残っていること、実測図と同様に詳細な細部まで観察されていること、柱などの立体的なものに描かれた壁画が模写の展開図によって全貌を把握できたこと、などの成果があった。とくに双楹塚の墓主像や行列図の細部については、この模写の観察によって初めて得た知見が多数あった。
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