2007 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における地域住民組織と民衆運動の存立形態に関する研究
Project/Area Number |
17520540
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
遠城 明雄 Kyushu University, 人文科学研究科(研究院), 助教授 (00243866)
|
Keywords | 近代日本 / 都市空間 / 地域組織 / 場所 / 住民運動 / 地域政治 |
Research Abstract |
1.主に以下の三ヶ所で資料の調査と収集を行った。 (1)宮城県立図書館と宮城県公文書館において、1910年の米価騰貴をめぐる仙台市の民衆の動向と市有力者の対応を明らかにするため、新聞資料の検索と行政文書の調査を行った。その結果、米価騰貴問題が市政の一大問題となっており、有力者がその解決に積極的な役割を果したこと、またその際に区など地域住民組織が実際の活動を担ったこと、また近世末に始まる備荒貯蓄組織が救済活動を行っていることなど、当時の都市支配構造の一端が明らかになった。またこの知見を、これまでの研究で明らかになった北部九州における事例との比較することで、当時の西日本と東日本の工業化や都市社会構造の相違点と都市支配の共通点などを明らかにすることができた。 (2)北九州市立図書館と文書館において、昭和初期の生活費軽減運動について市会議事録と新聞資料の調査を行った。特に電燈料・電車運賃の値下げ運動について、市会議員と町総代の関係、都市間での問題への対応の相違の社会・地理的背景など、運動の地理的な基盤の重要性が明らかになった。 (3)山口県立図書館において、昨年度からの継続している下関市を中心とした、各種選挙における地域団体や町の動向などの新聞資料について、特に大正期の記事を中心に検索を行った。大正期になると、新住民の増加やさまざまな民衆運動の高まりによって、既存の地域支配構造が揺らぎ始め、地域有力者集団の支配力が低下しつつあることなどが明らかになった。 2.近年の人文地理学における研究動向について、特に「空間スケール」の生産および政治について、先行研究の整理と検討を行った。空間スケールの生産過程をめぐるさまざまな主体の矛盾する関係、空間スケールを利用することによる政治的権力の保持、物質的かつ言説的なレベルでの空間スケールの利用が社会活動に与える意味、などの諸問題が重要な論点になっていることが明らかとなった。 3.これまでの研究を集約し、特に北九州地方における地域住民組織および民衆運動の存立基盤とその変動を、住民、行政、地域有力者、外部集団の間の対立、妥協、協調に着目して、明らかにした報告書を作成した。報告書では、第1章で住民組織と民衆運動の存立構造とその変動、第2章で支配層による民衆に対する表象と実践を論じ、資料として収集した新聞資料の一部を掲載した。
|
Research Products
(5 results)