2006 Fiscal Year Annual Research Report
太平洋島嶼部から来た日本漁船出稼ぎ者における異文化環境下の順応過程に関する研究
Project/Area Number |
17520553
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
風間 計博 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 助教授 (70323219)
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Keywords | 出稼ぎ / 原油高騰 / カツオ漁 / 順応 / キリバス / 太平洋島嶼部 / 異文化 / 文化人類学 |
Research Abstract |
本研究の対象は、中部太平洋キリバス共和国から日本へ出稼ぎに来て、カツオ漁船乗組員として雇用されているキリバス人である。故郷の島とは全く異なる言葉さえ通じない環境下におかれた出稼ぎ者の身体的所作の変化過程、さらには漁船および港での生活・労働に対する順応過程に関する考察を行うことが本研究の目的である。 キリバス人出稼ぎ者が多数働く静岡県焼津漁港において、1)漁業関連の統計資料を収集し、2)キリバス人出稼ぎ者およびかつお漁船関係者に面談調査を行った。平成18年度において特徴的だった事象として、原油価格の高騰により、燃料費のコストが急上昇したことがあげられる。とくに年度前半には、魚価低迷も相俟って、多くのカツオ1本釣り魚船が廃業に追い込まれた。廃業の結果、キリバス人出稼ぎ乗組員は解雇され、キリバスに戻ることになった。ただし、「よく働き、従順である」と見なされたキリバス人出稼ぎ者は、帰国させられずに他の漁船に乗り換えることが可能であった。逆に、廃業にならずとも「働きが悪い」と見なされた者が、乗り換えた者の代わりに解雇された。すなわち、異文化環境下における順応の程度による、雇用者側の出稼ぎ者選別が高度に進行したといえる。 一方、年度後半においては、減船による漁獲高の減少により魚価が上昇し、優秀な船頭を擁する漁船では、効率よく漁を行って市場で売りさばくことに成功し、前年比1億円以上も多くの売り上げを達成していた。そうした漁船に乗り込んだ出稼ぎ者は、通常の給料に加えて臨時の上乗せ金を受け取っていた。世界経済にかかわる原油価格の変動や、グローバルなレベルにおける水産資源の獲得競争に日本のカツオ漁船は巻き込まれており、そこでの労働力の調整弁の役割をキリバス人出稼ぎ者が担わされ、またマクロな状況変化に翻弄されている実態が明らかになった。
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Research Products
(2 results)