2005 Fiscal Year Annual Research Report
変動する中国社会と海外華人華僑社会の伝統文化及びそのネットワークに関する比較研究
Project/Area Number |
17520557
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
王 維 香川大学, 経済学部, 助教授 (10322546)
|
Keywords | チャイナタウン・春節祭 / 移住、移民 / ベイエリア、東北出身者 / ネットワーク / 華人コミュニティ |
Research Abstract |
報告者はこれまで日本華僑に関する研究を踏まえた上で、新たにアメリカ西海岸のサンフランシスコのチャイナタウンにおける春節行事及びサンフランシスコの近郊にある中国系新移民コミュニティとくに中国の東北出身者について調査した。調査を通して、新たな知見を得ることができたが、それについて主に下記の通りである。 1 サンフランシスコに約20万人中国系移民が居住し、チャイナタウンが北米においても二番目に大きい。チャイナタウンは1800年代後半から中国人の移住によって形成され、現在、サンフランシスコの観光名所の一つであるものの、比較的に伝統的なローカル・コミュニティを維持してきた。チャイナタウンにおける春節祭は、1953年より始められ、今日まで53年の歴史を歩んできた。1970年代を境に春節祭が拡大、再編された。同じ春節祭でも日本のそれとはかなりの違いがある。それは華人の移住歴史、形態、移住地で形成した社会、組織、上位社会と本国の関係など、いろいろな要因によって生成されたのである。 2、サンフランシスコの近郊ベイエリアにおける東北出身者はこれまでの移民と異なる移住背景とルートを持ち、同じ地域に集中しながらも、伝統的なチャイナタウンのような町を形成せず分散して居住している。かれらは日常と非日常生活において殆ど中国本土と変わらないが、彼らの移住により、移住先では地域における人口構成、言語、経済活動、諸慣行などの変化が余儀なくされた。その特徴は下記の通りである。 まず、土地が狭く人口が多い福建や広東と違って、自然環境や文化背景及び経済価値観のため、東北出身者は従来から生活に対する危機感を持たず、移民の伝統もなかった。それにもかかわらず、東北から大量の移民が発生したのは、中国改革開放の波による国営企業の倒産という背景があったからである。次に、移民のルートからみると、従来のような伝統的な移民の方式、いわゆる血縁、地縁、親縁という同郷組織を通じての移住は、東北出身者には殆ど見られない。それにとって代わったのは現代的な「蛇頭」組織などのネットワークである。そのネットワークを可能にしているのは、運輸とITの発展、グローバル化・ボーダレス化、などの条件の変化である。 さらに、他の地域の出身者及び伝統的移民社会と異なり、ベイエリアにおける東北出身者はその人数が多いものの、自ら組織したまとまった団体が存在しない。その移住先の社会関係といえば、血縁、地縁、親縁に基づく伝統的な組織ではなく、利益関係を重視する「友人」を含める多層のネットワークである。すなわち、かれらはまったく結束力がない集団である。
|
Research Products
(2 results)